ピアッシングのレビュー・感想・評価
全5件を表示
村上龍の原作衝撃の実写化!
原作は読んでおらず、完全に予備知識無しで観ましたが、何とも不思議な映画ですが、魅力的に感じてしまう病的な感覚をもった映画でした。
まず、鑑賞していて映画自体がヨーロッパ映画のレトロな作りの印象だなぁっと思いながら鑑賞していました。観終わった後に調べてみると、前述したように1970年代のイタリア映画を意識していると知って、やっぱり!って思った次第でありました。映像を2分割するようなカット割りといい、途中でこれ本当にハリウッド映画なの!?って疑ってしまったくらいで、見事に監督の描きたかった世界観が表れています。
作風だけでなく、音楽もレトロでとても映画に合っているのです。なんとも不思議な映画なのですが、音楽でさらにその異様さが引き立っています。あとエンドロールの音楽と映像が秀逸でした!
物語自体は、オカシイ男とオカシイ女が出会ったら!?を描いた作品と言った方が早いでしょう。なんとも理解しがたい状況が続いていきます。そして痛いシーンが多いですし、精神がおかしくなってしまいそうな映像も。そんな中でも、この映画コミカルに描かれているシーンも多いのです。病的なノリとちょっと笑ってしまうコミカル要素のギャップが印象的すぎる映画となっています。
そして、2人の不思議な関係が非常に面白いです。果たす目的が少しずつずれているのだが、なぜか惹かれあっている。でも決して愛し合う事なく付かず離れずな距離感を保ちつつ、お互いの目的を達成しようとするが、やっぱり噛み合わないといった具合です。なんでだろう、この二人のやり取りは正直きついシーンが多いのですが、もっと観ていたいって思う自分がいます。
そういう理由もあり、ラストの終わり方は非常にもったいなく感じます。恐らく観る人の大半は、「え!ここで終わるの!?」と感じるでしょう。この後の二人がどうなるかが気になってしょうがないです。
原作を読んでないため、疑問に思うところも多かったので、是非小説で読んで、この映画を補完したいと思います。
すれ違い小咄
村上龍のあの独特な世界観と毒々しい描写に魅了された青年時代、特に『愛と幻想のファシズム』は、日本にもこういう全体主義的流れが産まれる過程みたいなものを、まるで歴史小説のような史実の如くフィクションとして展開していくスペクタクルに恐怖と熱情を叩き付けられた思いを抱いたものだ。但し、今作の原作は未読で、オチも同様かは未確認。アンジャッシュのコント的ギミックは原作に近いらしいとのネット情報だが、落語の小咄的オチは分らない。或る意味、アメリカンジョークにも通ずるところもあるかも。というのも、映像の色彩設計や場面二分割、セット内のインテリア等、70年代風のアメリカのTVドラマを想起させるような造りに仕上がっている。現在ではないことはスマホが出てこないことからも明らかだ。自傷行為、殺人欲求を“ピアッシング”というキーワードに一括りにした洗練さとシンプルも原作者に寄り添った造りであろう。原作者がよく自書で登場させる奇天烈なクリーチャーも幻想パートで登場させているし、そういう細かいが全方位型のエンタメを端折らすに混入させている演出も原作リスペクトを窺える。思うに、もっとSM要素やトラウマをクローズアップさせ、過剰にデコレートすることが定石かと思うが、前述の通り、今作の喜劇性をフューチャーした面にキチンと向き合っているところが興味深い。あれだけの凶器で体に傷をつけられても、お互いそれ程痛みを表現しない所など、漫画的な構成もベースとして見受けられるし、多分、制作陣はこれもアニメと同じ、ジャパンクールの一環として捉えているのかもしれないと勘ぐる程である。ニプルピアスは相当痛いし、血もかなり出る。まぁ、あくまでもフィクションで、痛みを前面に出すと興醒めだろうし、こういう形での落ち着きどころなのであろう。作品中やエンドロール中も、強調されている高層ビルの無数の窓ガラスが何を意味しているのか、そのメタファーは読み解けなかったので、どなたかご教示頂けるとありがたいと思う今日この頃である。
二つの狂気が出会うとき
やるしかないだろ。殺せばいいだろ。
飲み込まれるような吸引力はないものの、予想外の連続で常に目が離せずドキドキしながら観られた。
目が回るほどドラッギーだけど抑えめでスマートで、洗練と混沌が入り混じったような表現が面白い。
初めての実行の前には必ず予行練習を。
稚拙で素人腕なパントマイムと、それに合わせた効果音の演出が巧い。
想像力が刺激され、その手の先に吹き出す血液や濁った目を持つ女の首が見えるようだった。
殺人衝動を持つリードと、自殺(自傷)衝動を持つジャッキー。
二人の欲望の形は合致するはずなのに、どうしてこうも上手くいかないのか。
反撃され逆にやられても、それはそれで悪くないかもしれないと言いつつ、想像に易い目先の苦しみからは咄嗟に逃げてしまうもの。
二つの狂気がマウントを取り合い押し引きし合う様、焦らし焦らしの感覚と秀逸なラストにニヤリとしてしまう。
双方のやりたいことを把握した上での先伸ばしや牽制、傷付け合いなんてそれはもうただのイチャイチャじゃないの。
ずっとそうしていればいい。
家で待つ妻子だとか仕事だとか警察だとか医者だとか、そういう現実的なあれこれは全部全部頭から放り出して。
小休止を挟みながら少しずつ身体を痛めつけ合ってジワジワと弱って息絶えればいい。
お似合いすぎる二人の今後に想いを馳せてキュンキュンしてしまう。
フラッシュバック的な幻覚から全てを読み解くのは難しい。何となく拾えるものはあれど。
おそらくリードは幼い頃母親から暴力を受けていて、それにより痛みを断つことが出来ているんだと思った。
「痛くないと思えば良い」と。
ウサギを刺していた少女は誰だろう。
ジャッキーに顔が似ている気がしたけど、彼女の過去ならそれをリードが知っているのは変なのか。
それとも幼い頃二人は知らずに遭遇していたとかだったら胸熱だな。
母親に重ねていたらしきモナの存在も謎。
「前に殺した」という言葉とあの映像での出来事をそのまま受け取っても良いものなのか。
母親も娼婦だったのかもしれない。
突然グロテスクなモノが出てくると興奮する。
触手ピロピロの虫、悪臭漂う汚水、謎の粘液、傷口に蠢く何か。もうそういうの大好き。
ただのサイコスリラーではなかなか味わえないグチャグチャモゾモゾした感覚がクセになる。
金髪ボブとスレンダーながらも下半身がムチッとしてるのがめちゃくちゃ可愛い娼婦ジャッキー。
彼女の心の内が全く読めないのが地味に恐怖。
眉を顰めたり含みすら感じる笑顔だったり、コロコロ変わる表情の奥に虚ろな穴があって、何がしたいのか何をしているのかわからない怖さがあった。
二人の会話がたまに全然噛み合っていないの面白い。
集合住宅のモチーフがとても好き。
無数に並ぶ住まいの部屋の内、それぞれとある一室で起きた物事。
普通に生きている人でも、奥底に抱える狂気や後ろ暗い欲望は誰しもが持つものでしょう。
明らかに異常事態の連続ではあるけど、どこか普遍的で当たり前のような印象も受ける。
現代的なのにレトロな雰囲気も流れていて、時代設定をぼやかしたようなモダンな見せ方も良かった。
肌を伝うアイスピックの針先の感覚はもっともっと欲しいところ。
物語は面白かったけど、期待していた痛みをもっと強くジワジワと慢性的に感じたかった。
少々リスクのある映画
なんの準備もなく無防備に観てしまうと、呆気にとられて、なんだこれは‼️となり兼ねないちょっとリスクのある映画です。
ある理由から「きちんと計画的に殺さなければならない」真面目な男と、ある理由から「自分のところに留めておかなければならない」強迫観念を持つ女が絡み合うことで生じる行為が巧まざるユーモアとともに描かれています。
この男と女がなぜそういう背景を持つようになったのかは監督自身がストーリーで語らず、役者の演技で語らせた、というようなことを言ってるようなので、映画を見ただけでは分かりづらいのは仕方がないと思います。
聴覚
個人的にとても好きな作品。
音楽が特にいい。エンディングも最高だし、結構エグいシーンのバックに流れてるレコードがいい味出してる。
一番好きなシーンは冒頭の、殺すシュミレーションを行うところ。音がなんともリアルで見えないのにそこにあるのが伝わってくる。
このおじさんヤバイな〜って思ってたけど、途中から今だ!やれ!いけ!と応援してしまった。
またハルシオン入りスープ飲んで続きをしてください。
全5件を表示