「本格ミュージカルを伝記仕立てでどうぞ」ロケットマン つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
本格ミュージカルを伝記仕立てでどうぞ
オープニングから「ウェストサイド物語」ばりのミュージカルで、度肝を抜かれたと同時にワクワクしたよね。
背景とか、周りの人たちが古い写真のように色が抜けていて、一瞬で「ああ、これは過去なんだな」とすんなり受け入れられる演出は最高。
タイトルにも書いた通り、「ミュージカル」というベースに「エルトン・ジョンの半生」という伝記要素が加わったのが本作の色だと思う。
時系列にとらわれず、ストーリーに対して一番「ノッて」くる選曲なのも良かったし、主演のタロン・エガートンが実際に全部歌ってるから、ミュージカルスタイルに完璧に馴染んでたのも良かった。
あんまりエルトン・ジョンに詳しくないから、観る前はやや不安な部分もあったけど、最終的に素晴らしい映画だったよね。
エルトン・ジョンの90年代くらいまでの人生が描かれているわけだけど、「愛」をテーマに「自分語り」をするエルトン、っていうスタイルが破天荒。
セラピーの教室で「えっ、こんな事聞いちゃって良いのかな?」みたいな気持ちを抑えつつ、エルトンの話を聞いてるみたいな。そんな感覚があったよね。
私自身、「自分を愛せない人は、他人からも愛されない(あるいは愛されていることを受け入れられない)」と確信してるから、エルトンがレジー(本名)をハグしてあげられたとき、「これでやっと愛してもらえるんだ」と思って胸が詰まったよ。
複雑な少年が、愛を求め彷徨って、傷ついて、時には自ら愛を手離して。そんな繰り返しの中で、静かに自分と向き合い、自分を愛するチャレンジをしたからこそ、他人にも受け入れてもらえる。
すでにスキャンダルとして知られていることとは言え、まだご存命なのにこんな赤裸々に映画化しちゃう胆の太さに脱帽。
でも、それこそエルトンが「自分を愛せている」証明なのかもしれない。
エルトン・ジョンという人物を通して、あらゆる形の愛を「尊い」と思える、素敵な映画だった。
ついでにプラスして。
エンドクレジットで映画の中の衣装と、実際に身につけていた衣装を比較・堪能出来るんだけど、あのアホみたいなぶっ飛び衣装(とメガネコレクション)を忠実に再現した制作側のエルトン愛。
うち何個かは本物よりクオリティが高いぞ!
衣装もこの映画の見所の一つかな。