劇場公開日 2019年8月23日

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「『ボヘミアン・ラプソディ』と表裏一体、夢と現実が交錯するミュージカル」ロケットマン よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0『ボヘミアン・ラプソディ』と表裏一体、夢と現実が交錯するミュージカル

2020年1月9日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

厳格な父と奔放な母、そして優しい祖母と暮らす少年レジーは天性の音楽センスを開花させて瞬く間にピアノを習得するがエルヴィスのアルバムを聴いてロックに目覚め、近所のクラブでのバンド活動、エルトン・ジョンへの改名、バーニー・トーピンとの出会いを経てスターダムを駆け上がる。しかし彼には誰にも埋めることの出来ない深い心の闇を抱えていた。

何と言っても監督がタロン・エガートン主演で全編DX-7が鳴りっぱなしみたいな80’s賛歌『イーグル・ジャンプ』のデクスター・フレッチャー。途中降板したプライアン・シンガーに替わって『ボヘミアン〜』を仕上げた人でもあるので、エルトン・ジョンの怪演が印象的すぎる『キングスマン:ゴールデンサークル』のマシュー・ヴォーン製作下でのタロンとの再タッグは期待以上の傑作でした。

どうしても『ボヘミアン〜』と比較されてしまう作品ですが、リアルな描写に徹していた『ボヘミアン〜』とは違ってこちらは夢と現実が渾然一体となったラリラリのミュージカル。随所に仕込まれるモブシーンは極めてテクニカルで大胆なのに繊細な演出。ステージ衣装がどんどん派手になっていくにつれて胸の奥に潜む闇がどんどん広がっていく様は悲惨ですが、それがちっとも湿っぽくないのはタロン・エガートンの軽快な演技によるところが大きいかも。劇中歌はタロンが歌っているのでエルトンっぽさが薄くなっているのも個人的には好み。バーニーに一途な想いを募らせながらマネージャーのジョン・リードとの関係に溺れて身を持ち崩してゆく辺りは『ボヘミアン〜』におけるフレディとメアリーの関係に重なるものがありますが、こっちはオッサン同士なのでやっぱりサバサバしています。しかし『ボヘミアン〜』とこっちの両方に登場するジョン・リード、どっちもクソ野郎として描かれてますが本人はどう思ってるんでしょうか。道歩いてたら生卵とかぶつけられそうで心配です。

『ボヘミアン〜』では『ブレイク・フリー』のPVが再現されてましたが、こっちでは『アイム・スティル・スタンディング』のPVが再現されてます。これずっとロケ地はリオだと思ってましたがカンヌなんですね、初めて知りました。『ブレイク〜』は1984年、『アイム〜』は1983年の曲なので『ボヘミアン』と本作、表裏一体というかBTTFとBTTF2のように同じ時間軸で別々に進行しながら影響し合っている作品と言えるかと。

エルトンの母シーラを演じているのはブライス・ダラス・ハワード。色気を振り撒く30代から老齢までを見事に演じ分けていて圧倒的な貫禄を示していました。一応実録モノなのでエンディングはお約束のアレですがここにもあっと驚くネタが出てくるので要注意。そんなトコにまでこだわってたのか!?と驚愕しました。

よね