ブレグジット EU離脱のレビュー・感想・評価
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個人的には☆5
政治家や社会に対する痛烈な言葉、不満を的確に代弁してくれる爽快な言葉のオンパレード。
イギリスのEU離脱を陰で操ってた人はこの人だ!という映画だけれど、同時にSNSの怖さも表現している。「ターゲティング広告(広告の対象となる顧客の行動履歴を元に、顧客の興味関心を推測し、ターゲットを絞ってインターネット広告配信を行う手法)」の仕組みを用いてと票を集めるやり方は、これからの未来を示唆している。
もちろん、全てではないだろうが、ある種の行動は【スマホに動かされている】といっても過言ではない。その認識をしないまま、多くの人は人生を終えるのだろうか…。そんなことまで考えさせられる。
人は、「無意識の状態」が無防備。マインドコントロールや煽動やプロパガンダは、無意識の状態を狙った攻撃ともいえる。
ベネディクト・カンバーバッチが演じる主人公:ドミニク・カミングスは、理路整然としていて、足と頭を使って集めたデータを基に動いていて、クリエイティブディレクターのような総合的に全体を観るチカラを持っている。時代の、思考の先を歩きすぎて、周囲の人間が「遅れている」と感じてしまう。
「未来を良くしようと」未来を見据えて歩く者と、「現実を良くしよう」と今を見据えて歩く者の戦い。
【EU離脱するかどうか】という今を決める戦いなら、後者に分があるだろうが、未来の話をするのなら、どちらが有利だっただろうか。
互いに手を取り合っていれば、「今」も「未来」も見据えた【新しい結果】がもたらされたのかもしれない。
劇中でも言っていた。
ドミニク・カミングス「国民投票自体がバカげたアイデア。決定方法として最悪だ。複雑な問題を白か黒かで割り切ろうとしてる。もっと繊細で洗練された手法があるのに…今の政治には望めないか
。まぬけな話をする政治家ばかりだ。(この後の言葉もすばらしいが省略)」
「繊細で洗練された手法」は、『話合い』のことだったのかもしれない。
思考回路が現代的で言葉にムダが無く、そのせいで人との関係を築きにくい人間性だが、デジタルとアナログの思考回路のバランスが取れたクレバーさには憧れる。
政治のダークサイド
「イギリスを、国民の手に取り戻そう!」とボリス・ジョンソン氏は有権者に呼びかけた。
結果は、僅差ではあったものの、離脱派が勝利。
この有名なキャッチコピーを生み出したのが、主役のドミニク・カミングスという男。
映画はこのカミングスを、ボリスを裏で導いたブレーンとして描く。
いわゆる陰謀論というのは誇大妄想のフェイクとレッテルを貼られ無視されがちだが、言葉通り「隠された謀(はかりごと)」なので、嘘でも何でもない。私たちは予め計画された出来事を知らされていないだけなのだ。色もファッションも本も映画も、業界が流行らせる方向性を決めており、その通りに商品を流通させる。政治もしかりで、自ずとプランがある。
ボリス陣営はキャンペーン時に「イギリスはEUに毎週3億5000万ポンド(約470億円)を支払っている」と主張し、離脱派のキャンペーンバスの車体にもこの金額を掲げた。しかしこれは誇張された金額だった。
また、SNSなどのデータを使って、投票しない層の表を取り込むため、高度なアルゴリズムを使い、個人に向けて効果的な別々の宣伝をうつ。怖いのはこのシステムを持ちかけたのはアメリカの若い起業家であり、さらにその裏にはあの巨大財閥資本が絡んでたということだ。
しれっと最後にテロップで流れていたが、その一行で、それまでの全てが茶番に思えた瞬間だった。ドミニクは知ってか知らずなのか。いや、全ては仕組まれていたと言えことなのだろう。
この一文を人に見せるためだけに、本編は費やされたと言っていいと思う。
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