劇場公開日 2019年9月6日

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「いなくなれ群青」いなくなれ、群青 Lily mimaeさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0いなくなれ群青

2019年9月15日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

この映画の原本は読んでいませんが、かなり難しい世界観をよくこの時間内でまとめられたなと思いました。
かなり評価は分かれるかも知れません。 見る側の理解度がかなり問われるかと思われます。

「君の名は」などの好きな人は受け入れやすいかも知れません。
そういう意味では中高校生などの若い子たちが今の自分達と照らし合わせて、現在悩みを抱えている人にももっと見て欲しい映画だと思えますし、先生からでも薦めやすい作品かと。

それくらいいっぱい経験を重ねた先の、何度も何度も繰り返されて再び戻ってしまう純粋さの塊のあり方の作品ともいえます。

流星さんの本質をうまく起用されたなと感じます。どのキャストの人たちも美しく魅力的にとらえていて、昨今では珍しく言葉遣いも美しく、薄くぼやけた背景の世界観も夢の中で見たような光景と錯覚さえ覚えるのも女性監督ならではだからかの作品かも知れません。

美しいものを感じたい人におすすめ。

だけど内容は綺麗で収まる話ではなく、誰もが社会で生きてゆくためにどう自分の個を確立させるか、我を強めるのではなく、自分以外の他との折り合いで誰をも傷つけないでいたいという願いの中で自分を見失ってゆく過程を思い出さされます。

悲観的な現実の中にある安心安全とした居場所を見つけたとしても、理想という思いが自分の心をどうしても付き動かせてしまう、その微妙な感覚の話を見事に主人公二人の織りなす会話に描かれています。

抑えきれない衝動、思いは、人を傷つけてしまうかもという恐れを超えてしまいます。
破壊は迷惑をかけたとしても、恐れを引き起こすものであっても。

若い子たちのこれを受け取れる感性は次世代の価値観の予感を感じます。

見た目綺麗に収められたとしても、全体の調和を乱さないようにしても、それは全体の方向として違えてしまう魔法としてかけられたものとしたら?

いずれ誰かがトリックと気がついてしまってパンドラの箱を開けてしまうのが全体の進化かも知れません。

今までの愛という陳腐な表現でさえも全体の概念が変わるのだろうなと思えます。

Lily mimae