「悪くは無いけど、良くも無い。期待が強すぎたせいかも…」空の青さを知る人よ sanchuさんの映画レビュー(感想・評価)
悪くは無いけど、良くも無い。期待が強すぎたせいかも…
『あの花』『ここさけ』どちらも大好きな作品で、今回も物凄く期待して初日に鑑賞しましたが…正直、「あれっ?」と思ってしまったのが正直な所です。
決して酷い映画ではないんですが、特筆すべき点も無いというか…
原因の殆どは脚本にあります。
最大の問題点は、主人公の「あおい」がストーリーにあまり絡んでいない点でしょう。
今作のストーリーを一言で述べると『「あかね」と「慎之介」が復縁するまでの話』で
説明できてしまうんですが、不自然なほど「あおい」が関わってきません。
狂言回しとしての役割も不十分で、極端な話「あおい」無しでも話が成立してしまいます。
主人公の「あおい」を積極的に話に絡ませる機会は結構あったんです。…例えば
①「しんの」を成仏?させるために「あかね」と「慎之介」を復縁させる。
②「慎之介」が嫌な奴だから「みちんこ」とくっつける!
…というような台詞はでてくるのですが、じゃあ具体的に何かしたか?というと、特に何も
してないんですよね。
「あおい」が「しんの」を好きになる描写がほとんど無いのも疑問です。
音楽祭に代理で出ることになった「あおい」が御堂で練習する場面があるのに、何故かここで「しんの」との交流描写が殆ど無い…好きになっていく過程を見せる絶好の機会なのに!
普通の作劇法で考えると、「あおい」が音楽祭に代理参加するという大きなイベントを設定した以上、それに向けてストーリーを収束させていくべきだと思うんです。
なのに何故か音楽祭のことが脇に追いやられ、唐突に発生した(これももっと雨の描写があれば説得力あったのに…)土砂崩れがクライマックスに繋がるという…
一体何でこんなことになってしまったのか?…あくまで推測ですが、
『あの花』『ここさけ』と同じ展開になるのを避け、奇をてらった結果かな…と思います。
成仏させるために頑張るのは『あの花』だし、
イベントに向けての交流過程を描き、そこを終点に収束させるのは『ここさけ』だし…
そのあたりを差別化していった結果、今ひとつ盛り上がりに欠ける映画になってしまった気がします。そんなことなら、中途半端に前作と似た設定にするのではなく、もっと別のテーマで作ったほうが良かったのではないでしょうか。
最大の問題点は、『故郷を捨て、東京に行った』話を、秩父を舞台に描くのが無理がある点です。秩父から池袋まで、一時間ちょっとで行けるんですよ?
もっと地方(東北とか)ならともかく、遠距離とも言えないような距離で終わった恋について過去の恋がどうのこうのと、特別なもののように言われても…説得力ない気がします。
このあたりもテーマ選びを間違えてるとしか思えないんですよね…。