「どこに書いてあるんだ?」ガーンジー島の読書会の秘密 bloodtrailさんの映画レビュー(感想・評価)
どこに書いてあるんだ?
ゴテゴテして入り組んでいるけど、すごく素敵な物語を、控えめな演出で見せてくれる映画だった。"Literary"に繋がりを持った人達を描いた物語は、二つの古典文学をモチーフにしています。シェイクスピアの"ロミオとジュリエット"、シャーロット・ブロンテの"ジェーン・エア"。
ナチス・ドイツの上陸を許し、占領されてしまったガーンジー島。正義感に溢れ気の強いエリザベスと、心優しいクリスティンの恋はロミオとジュリエット。
男女平等の意識を強く持つジェーン・エアは、宣教師セント・ジョンの妻になる事を拒み、火事で片腕を失い盲目になったロチェスターに求婚します。尻ごみをするロチェスターに「愛の前に何ものも障害にはならない」と彼を諭します。
マークからのプロポーズを反故にし、女王の様な指輪を返したジュリエットは、マークからのプロポーズを受けた埠頭で、ドーシーに「結婚する?」と、言い放ちます。女性からのプロポーズをはじめとした、進歩的で自立した生き方を求める姿はジェーン・エアを彷彿させます。
島から戻ったジュリエットは、自らを乗り越えるために。すなわち、あの島で魂の繋がりを持った人々を吹っ切るために、約束を破って小説にします。書き終わった原稿。作家としてのジュリエットの心は高揚していましたが、同時に、深い深いふっかーい喪失感を覚えます。本に挟まれていた「押し花」は、ジュリエットに「本心を押し殺して生きて行けるのか」と問いかけているみたい。ガーンジーでの日々と、ロンドンでの生活。ドーシーとマーク。どう生きたいのかの答えに迷いがあるはずも無く。
"On my way to find you"
いや、"On my way to find MY LIFE" の途中で出会ったのが"The Guernsey Literary and Potato Peel Pie Society"であり、ドーシーであり。だから、ガーンジーに戻らなければ。
"The Guernsey Literary and Potato Peel Pie Society" の原稿と共に届いた手紙には、ジュリエットの、自分の信じる道を進み続けたエリザベスの様に生きると言う決意が語られていました。読書会でジュリエットが見せたジェーン・エアの解釈は彼女自身の価値観、生きたい生き方だと、ドーシーには分っていました。海岸で、ドーシーの自宅で、ジュリエットからの愛を感じていたドーシー。いや、何にもまして、この島と読書会で繋がった人達への愛。そして文通で理解した、手紙で判ったジュリエットの人柄。
ジュリエットがマークとの結婚を受け容れる事は無い。ドーシーは確信し島を飛び出します。Mr.エベン、どこにも書いてないよ、そんな事。書いて無いけど、ジュリエットの想いと決意は、この手紙の文面に溢れている。この胸に伝わって来る。
もう、島の風景が最高。画は文句ないです。と、役者さんが残らず最高です。読書会に押しかけてアイソラのジン飲みたいよね。
良かった。とっても。俺、リリー・ジェームズでこれが一番好きです。