世界の涯ての鼓動のレビュー・感想・評価
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この監督らしい知的恋愛映画
美しい風景と閉塞感
主役2人の持つ、高い職業意識に裏打ちされた知的エリートっぷりと持って生まれた美形さに、圧倒されます。ただただ絵になる二人なので惹きつけられます。共感はしづらいけど。これこそ大スクリーンで見るべき作品でしょう。
離れた二人の居場所は共に、スケールの小さなレジャー気分の人間には決して近づけないところです。それぞれがお互いの短い逢瀬を反芻しながら過ごす時間の閉塞感を救ってくれたのは、地球規模の風景でした。
男女平等参画社会、原理的宗教持つどうしようもない暴力性、懐の大きい自然への畏敬と人間の科学的挑戦心、、、、現代社会を俯瞰した時に無視できない要素を背景に、今一番可能な悲恋を見せてくれたのだと思います。
ラストは各人の想像力に委ねられているので、尻切れとんぼとは思いません。
二人とも、背景の家族関係は出てきません。その意味で、全体的に抽象的な世界観が醸し出されていました。
『パリ・テキサス』の次位に好き。
2つの世界の果て
ヴィム・ベンダースはさておき、アリシア・ヴィカンダー目当てで鑑賞です。「エクス・マキナ」のアンドロイドや、「ジェイソン・ボーン」のCIA局員など、知的な役柄がよく似合うが、本作でも研究者の役。調べたら、本作は昨年公開の「トゥーム・レイダー」の前、2017年の公開だったのですね。相変わらず、お美しい。個人的には、ナタリー・ポートマンの後釜というイメージなのですが。
といった背景はありつつ席に着いたのですが、気づいたらジェームス・マカヴォイに目を奪われた。「スプリット」や「X-MEN 」が印象強いが、「アトミック・ブロンド」のスパイ役が好きだったので、本作のスパイ役も期待どおり、いや、それ以上の出来だった。
ヴィカンダーとの馴れ初めのくだりも、ようやく普通の人間っぽい場面で、彼の良さがよく出ていた。次のジェームス・ボンドは、マカヴォイが良いのではないだろうか。
さて、ストーリーはよく練られていて、美男美女の恋愛を描きながら、お互い離れ離れ、しかも極限の状態に置かれた心情をつづる。厳しい環境の中、それぞれを想い、それを糧に困難を乗り越える。
海のシーンが多いが、美しい自然の画面から、寄せては返すメッセージが一定のリズムを刻んで、心地よく描かれる。ややテンポはダルな感じだが、風景画のような自然のシーンや2人の演技で、飽きずに最後まで観れた。アリシア演じるダニーの話、マカヴォイ演じるジェームズの話、2人の恋愛の話の3本分の話を、単なる恋愛ドラマで終わらせずに詰め込んだところが、本作の面白さだろう。
山本美月似のアリシア・ビカンダーが軸
複数の深遠なテーマを絶妙にブレンドした見応えのある作品。ジェイムス・マカヴォイのベストアクト作でもある。
原題 Submergence 水没 私は邦題もセンスが良いと思う
お互いの機知と知性に惹かれ合い、あっという間に深い恋に落ちる男女。ノルマンディー海岸沿いの瀟洒なホテルでの数日はあっという間に過ぎ、それぞれの世界の涯ての責務に赴くのだが・・・。
水をキーワードにその後の二人の姿がシビアに哀切に描かれる。特にマカヴォイ演じるジェームズの過酷な境遇はリアリティー感が凄い。
ラストは解釈を委ねられるが、実に美しいシーンである。深海の風景や殺伐としたソマリアの風景も見応え抜群である。
色々な見方があると思うが、私はこの作品は二人の男女の美しいラブストーリーと感じた。近くには居なくても、厳しい責務を遂行する中、お互いを想う気持ちが、きちんと描かれているからである。
巨匠 ヴィム・ヴェンダースは健在であった。
時間、意識、孤独、信じる事
個人的に苦手で
ヴェンダース監督作だと事前にチェックしていたら、観に行かなかったのに。
微妙で不思議な話。
バカンスの5日間で、燃えるような恋に落ちた、女性生物学者と、MI6のスパイ。
休暇が終われば、それぞれ仕事のあるグリーンランドの深海と、ソマリアのイスラム過激派たちの拠点潜入へ。
離れ離れになったことが身を切るようなつらさな女性と、ジハード戦士に捕まって死にかけるが彼女にもう一度会うことをモチベーションに生きようとあがく男。
会いたいという気持ちを表現するために、ここまで極端な設定を持ってくるかなー
と、ファンタジー色の濃さで、イマイチのめり込めず。
また、ひたすらイチャイチャとベッドシーンが続く前半は、眠気を抑えるのが大変でした。
自分的には、ヒロインのアリシアのボディラインを眺めるだけの作品になってしまった。
ハッピーエンドですよね。
謎だらけでちっとも面白くなかったけれど
監督から丸投げされますが、きっと大丈夫!
冒頭の美術館のシーン、いくつか絵画が出てきますが、『海辺の僧侶』という作品について、ネットなどで一般的な解釈を仕入れて置くとこの映画についての考察に役立ちそうです(公開初日のトークショーを聞いてそう思いました)。
また、この監督の過去作品をご存知のかたには、オマージュ的な楽しみもあるようです(私は過去作品見たことないので見当もつきませんでしたが)。
つまり、真っさらな状態で観るとなかなかに厄介な作品。
逆にいえば、テーマらしきものはそれなりに提示されているので、もっともらしい解釈はそれなりにいえてしまえる作品でもあります。
世界の涯てとしか思えない場所での孤独な闘い、ジハード戦士、深い闇のさらに奥底に宿る生命起源、等々、何かを語るためのキーワードは盛りだくさん。
解釈はともかく、この映画の最大のみどころはやはり映像なのだと思います。
アフリカ大陸東海岸の砂浜や空の広がりの美しさ。そして何よりも、アリシア・〝ララ・クロフト〟・ヴィキャンデルの天使感溢れる知性、強さと脆さが同居する繊細な美しさ。
これだけでも映画館で2時間過ごす価値は充分にあると思います。
ラストなんかも『解釈は君たちに任せるから自由に考えてみてよ』という感じで、まんまと監督から丸投げされた形ですが、不思議と消化不良感とか不満はまったくありません。
自分が納得できるイメージを誰もが持てるような〝汎用性〟のある終わり方になってます。
繋ぎとめるもの
※ トークイベントで、映画のプロローグの美術館の場面で、カスパー・フリードリヒの「海辺の僧侶」という絵画が背景として使われ、作中の映像を想起させるものになっていると説明がありました。出来れば、気をつけて観てみて下さい。僕は後でネットで確認して、なるほどと。ヴェンダースは、やっぱり良いです。
以下ネタバレを含みますので、ご了解下さい。
映画を通して、言葉で表すのが難しい、何か息苦しさのようなものを感じる。
そう、映画のオリジナルタイトルにもあるように、水の中にいて、少し圧迫感があるような感じだろうか。
そして、この感覚は、次第に水の奥底に沈み、息の出来ない、死を感じさせる状況に変化して行く。
出会うはずのなかった2人が出会い、そして、それまで研究や任務が全てにおいて優先すると考えていたのに、お互いは惹かれ合い、求め、側にいなくても常に頭から離れない、そう、水の中で身動きが取れない、息苦しさにも似た感覚を覚え始める。
しかし、これは生への渇望に繋り、ダニーは深海の奥底ハデスから脱出し、ジェームズも生還への決意を新たにする。
ダニーはジェームズに出会い、深く想い、そして、深海の奥底で生命の起源に触れ、生を実感する。
ジェームズはアルカイダに命を奪われた多くの罪のない人々を想いながら、ひとりの大切な人、ダニーに再会するために、自身の生の意味に気付いて行く。
北の曇天のフェロー諸島でも芽吹く生命と南のソマリアで死と隣り合わせの人々。
こうしたコントラストは物語に深みを持たせてるように思う。
エンディングの最後のカットは、2人がどうなったのか、観た人に判断を委ねてるように感じるのは僕だけではないはずだ。
ヴェンダースの映像は暖かい。美しいとか視覚的な言葉ではなく、肌て感じるような表現をしたくなる。
選んだ愛の物語も、切なくも愛おしい。
人によって色々な想いが交錯するのではないかと思う。
静かに、そして息を深く吸いながら、胸が少し押し潰されそうな感覚を楽しんで欲しい作品だ。
※ マカヴォイも良いですよ。
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