「好みではない!が、ハラハラドキドキした。」サマー・オブ・84 たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
好みではない!が、ハラハラドキドキした。
記念すべき50本目のレビュー!
1984年夏、少年の失踪が相次ぐ街を舞台に、犯人探しに奔走する少年たちが経験する恐怖の体験を描くホラー・スリラー。
この映画は15歳の少年が、友人達との一夏の冒険と淡い恋を経て、大人へと成長していくジュブナイル青春映画です。
…まさに書いた通りの『スタンド・バイ・ミー』を想起させる映画なんですが、このテーマの青春映画をここまで陰惨な作品に仕立てたのはある意味凄い。
(衝撃のラストというコメントを目にしていたので、何となく想像はしていましたが。)
主人公はムーとか読んでそうな思い込みの激しい少年で、彼が隣人の警官を連続殺人犯だと思い込み、友達を巻き込んでスパイごっこを繰り広げていく…という映画で、ここまでだとミステリー仕立てのコメディー映画なのかな?とも思えます。
主人公とつるむ親友は、ヤンキー、デブ、メガネとよくあるステレオタイプな感じ。というか、完全に『スタンド・バイ・ミー』のパロディーといっていいと思います。
そのスパイごっこと並行して、ご近所のセクシーなDJのお姉さんとちょっといい感じになるという、これまたステレオタイプな描写。
この辺りはステレオタイプだからこそ、共感しやすく、映画に入り込むことができました。
主人公達のいかにも中二的なエロや悪さ、お酒への関心には「わかるわかる〜」と懐かしい感覚を覚え、ある種の心地よさを感じました。
あの秘密基地に集まってごちゃごちゃする感じ、大好きです。
ヒロインも親の事情で街を出なくてはいけないという理由から、主人公と急接近します。この辺りもザ・ステレオタイプという感じ。だからこそ心地良い。
殺人犯だと思っていたのは主人公の勘違いでしたー。お隣さんをスパイしていたことが親にバレ、みんな怒られました。めでたしめでたし!
なら、まぁ普通の青春映画なんですが、だんだん映画は奇妙な方向に進んでいきます。
隣のおじさんは犯人なの?違うの?という緊張感を、音楽の演出と80年代のホラー映画風な暗く寒々しさを感じさせる画面構成でうまく引き出しており、観ている間は終始ハラハラしていました。
そして、映画のラストの展開は…
主人公が隣人の家に忍び込んでからはまさにジェットコースター級に物語が進展していきます。
そりゃ、あのラストはあえて賛否両論出るように作ったんだと思いますが、個人的にはやはり好きではないです。
そもそも、警察ももっと犯人をちゃんと探せよ。何簡単に忍び込まれてんの。と思ってしまいました。まぁインパクトはありましたが。
最終的に初恋は実らず、秘密基地も取り壊され、主人公は痛みとともに大人になりました。
という感じに終わるわけですが、せっかく舞台を84年に設定し、犯人のあの捨て台詞があったのなら、最後は公開年である2017年に時代が移り、そこで主人公と犯人が…
みたいな展開があると良かったのに〜、と思ったりしました。
『スタンド・バイ・ミー』のようなジュブナイルものだと思って観に行った観客の心をぶち壊す、非常に好戦的な映画です。もう一度観たいとは思いませんが、割とよく出来たサスペンス映画でした。