「普通を切り取る」浅田家! aMacleanさんの映画レビュー(感想・評価)
普通を切り取る
中野量太監督作品は、「湯を沸かすほどの熱い愛」以来。この作品を観て、「長いお別れ」は未鑑賞なので、観たくなった。
本作、家族というテーマでいろんな角度から切り込んで行く話だが、ドタバタコメディでも、シリアスな作品どちらにでも仕上がっただろうが、両方のエッセンスをちょうど良い塩梅に混ぜられたようだ。軽すぎもせず、重すぎもせず、時代の要求に応えたつくりだ。
主人公、浅田家の騒動の中心である次男の政志を二宮和也が演じる。大騒ぎするでもなく、淡々と家族を巻き込み、珍妙な家族写真を撮影していく。
そんな政志の成長譚かと思いきや、彼はいつまで経っても子供のままだ。写真学校を卒業式しても定職につかずフラフラして、写真で勝負しようと上京しても、幼なじみの彼女の家に居候。そんな頼りない社会不適応な青年なのだけど、二宮が演じると、嫌味がない。なんだか憎めないのが不思議だ。
ストーリーとしてはそんなに捻りがあるわけではなく、素直に見て素直に話を追っていく、拍子抜けするくらいストレートな話運びだ。そこに、写真という形で切り取られた生活の断片が、奥行きを加える。単なる家族のポートレートだけど、そこにはいくつもの物語があり、歴史があり、想いがある。あたりまえなのだけど、普段は気にすることがない事だ。政志が兄に向かって「普通ってなんなんや」と、問いかけるセリフがある。あたりまえすぎて見えない普通を求めていた政志には、それが見えていたのだ。それを切り取ることを求めて写真を撮ることが、彼のテーマとなり、それらは人々に伝わる確信があったのだろう。
真面目に書いてしまったが、クスッと笑えたり、方や胸を熱くしたり、2時間の中でけっこう感情がくすぐられて楽しめる。映画としてきれいにまとまっていて観やすいし、役者陣も安定していて違和感がない。エンドロールまで含めて、ホッとする良作だ。