アンダー・ユア・ベッド(2019)のレビュー・感想・評価
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これはただのホラーではない
考えて見てほしい。
もしあなたの眠るベッドの下に、何者かが息を潜めていたとしたら…。
都市伝説にもありそうなこの設定から物語は始まる。
静かに、ただ静かに、好きな人を見守りたいと思う気持ちが常軌を逸していく主人公。
相手は、たった一度コーヒーを一緒に飲んだだけの関係。
恋人でもなく友達ですらない。
でも、そのコーヒーを飲み話をすることが主人公にとってはどれだけうれしく幸せな時間だったことは想像にかたくない。
相手は結婚して子供もいるが旦那からの酷いDVでぼろぼろにされている。
助けたいのか?自分のものにしたいのか?
相手を思うということがどういうことなのか、
考えさせられる。
すきな相手のベッドの下に潜む主人公は、常軌を逸しているけれど、
誰かからもわからない花を待ち望む彼女もまた、少し道を外れている。
名を名乗るわけでもなく、ただそばにいたいと思う気持ち。
ベッドの下から届くはずのない手を伸ばす主人公が切ない。
どんなに彼女を思っても、DV旦那のように彼女に触れることはできない。
できなくても彼女を思う。それはエゴなのか。
最後に名前を呼ばれ、存在を認められた彼はこれからどう生きていくのか。
彼女との関係が、恋人でないにしろ残ってほしいと願った。
不幸を追う女
西川可奈子の激演を評す。
DVとストーカーを呼び寄せる女、予めの社会への媚び諂いが変な社交性に裏返り直ぐ暗部を見透かされる女、不幸を追う女。
そのリアルが新味。
墜ちる螺旋から終生這い出せずやがて子への虐待を介して不幸は伝承されるやに。
何と暗い。
最後は『良かったね!』と思えた!
承認欲求が溢れるこの世の中で、親からも『忘れてた』存在として生きる青年のたったひとつの『しあわせ』の記憶。それだけを頼りに生きてきただけなのに…
でも最後は『良かったね(;∇;)』と思ってしまった。
高良くん、あの綺麗なお顔忘れられるなんて…
化ける予感
氷菓を見たとき「おや」と思った。
この映画が原作の面白さに依存しているのは解る。
また、かの京アニの厖大な仕事をそのまま絵コンテにしているのも解る。
ただし、個人的に、映画は面白かった。
山崎賢人マイナスがあったけれど、本郷奏多プラスがそれを覆い隠していたし、氷菓は、個人的に傑作だった。
その根本的な理由は、安里麻里のホラーテイストにあったと思う。
この意外なB級出身監督の才能は暗澹の空気づくりであろうかと思う。
もとよりホラー色がない氷菓の謎解きが、中村義洋の残穢を思わせる暗い雰囲気のなかで語られる。千反田家の暗い陰影など殆ど犬神家のように見えた。その暗さが、類型的な学園ものにおちいるのをふせぎ、かつホラー映画の演出的間合いによって、萌えを提供するはずの「わたし気になります」さえ呪詛のごとくに聞こえた。
安里麻里は日本映画界でここのところぜんぜん生まれてこなかった「面白い映画をつくれる監督」ではなかろうか。この映画はそれを裏付けるものがあった。高良健吾ゆえにキモさがまったく無いのに加えて暴力夫との対比でほぼ彼が正義に見える。ありがちなストーカー話だが、人称の変わるナレーション、バイノーラル風な録音、マンデリン・・・それらが暗澹の空気感のなかで語られることで尺を乗り切る楽しさがあった。
切ない
全く甘くない
切なくて過激でけれども静かな恋の物語。
性的マイノリティ、変質者、DVなどに
スポットが当てられたような作品。
世の中では裁かれてしまうサイドの人たちの
心情を上手く表現した作品。
それなりの理由で
執着してしまったり
また受け入れる人の心情を
描いていた、
とてもよくできた作品。
また高良健吾と西川可奈子の演技が良かった。
2人のセリフ、ナレーションで進む展開で
2人の心情がすれ違いでその声づかいが
なんとも言えなかった。
副音声
常に高良健吾のナレーションによって設定が説明されるスタイルの副音声映画。そのせいでドキドキハラハラすべき箇所がそうならず、退屈の極み。
そもそも高良健吾が誰にも記憶されないようなインキャっていう設定が無理ありすぎで、2回目グッピーをプレゼントしたときに女がなにも覚えていないってミスリードをかけるのに、違和感がありすぎる。インキャはそんなこともあるのか...と騙される必要があるのに。
このキャストじゃないと客が呼べないって話なら女優のキャスティングを頑張るべきだと思う。
後半は面白かった。過剰に臆病で助けに行ったのに何もできない高良健吾。笑った。インキャが忘れられないためには人を殺して救えばいいじゃんというオチも。まぁ原作読んでて知ってるんですけど。
最後に女はどう思うか
救いがあるのは、親からも忘れられたトラウマをもつ自分の価値を見いだせない主人公が、グッピーという趣味を持っていること。これで無趣味だったら救いようがないよ。ストーカーになって、旦那を殺して初めて念願の名前を呼んでくれるなんて、なんて皮肉だ。とにかく彼女には幸せになってほしい。
もし誰かいるなら、お願い。私を助けて
映画「アンダー・ユア・ベッド」(安里麻里監督)から。
観賞後、他人のレビューを読んで驚いた作品の一つ。
多くの人が、作品を絶賛し、高評価を与えていたからだ。
私には「ストーカーVS一途な愛」がテーマではなく、
自分の感情に任せて妻に暴力を振るう男と、
その夫の暴力から、逃げようとしない女の行動の方が、
主人公のストーカーより印象に残ってしまった。
だから、この作品を思い出すフレーズとして選んだのは
夫からのDV被害に疲れた彼女が、自宅に他人の気配を感じ、
「もし誰かいるなら、お願い。私を助けて」と呟いた台詞。
いくら主人公が存在感のない役割と言っても、11年前に
一緒にお茶を飲んで、熱帯魚のグッピーまでもらう約束をし、
さらに、当時と髪型や雰囲気、声も変わっていない異性を、
忘れてしまうことなんてあるのだろうか?という疑問が、
最後まで違和感として残り、作品に没頭できなかった。
11年って、長いようで意外と短いんだよなぁ。
グッときた!
繰り返される千尋へのDVに、正直辟易していたが、最後の三井の正義の味方ぶりに、それまでつもり積もった鬱憤が一気に解消された。そして、あの感動的なラスト。いろいろな意見があるかも知れないが、俺はこの映画、好きです。
ただのストーカー
原作未読。
大石圭は『処刑列車』が好きで、エロスとバイオレンスと恐怖を純文学寄りのスタンスで書く作家というイメージを持っていた。が、わかっていたのにうっかりエロス方向に気を取られてバイオレンス方向でごっそり精神力を削られてしまった。
ただのストーカーと一途な愛情の境界はどこにあるのだろう。高良健吾だから割とすんなり成立しているが、他の人ならどうだっただろう。
とはいえ構成等は非常に好みで細かい仕掛けも楽しめたので見てよかったとは思う。
犯罪者が主役なんだけど悪じゃない
大石圭原作ということを知らず、タイトルとあらすじが江戸川乱歩の《人間椅子》を彷彿とさせたので、観にいきました。
高良建吾さんって、どこか気持ちの悪い雰囲気があって、
今回の三井くんにはぴったりでしたね。
もう少し気持ち悪くてもよかったかもしれません。
原作者の大石圭という作家さんは犯罪者を主役にすることが多いそうですが、
絶対に悪にしたくないというポリシーがあるそうです。
いいなぁ、そういうの。
今回も単なるストーカーの話ではなく、ターゲットの幸せを願う純粋な想いが、観ている側をいつの間にか応援させていたりして、
三井が意気地がなくて行動できなかったときも、
本気でイラついたりしましたもん。
しかし観終えて思うに、
この作品の本当のヤバイやつはこの夫だし、
千尋も自分に原因があると早いうちに気づけばこんなことにならなかったろうにと思ったり、
いろんな意味でイライラさせられた作品でした。
強いて言うなら、乱歩が持つ壮美な世界観を演出してくれたら、
もっとよかったのになと思ったり。
これじゃあ色気がなりないなぁと。
異常な執着か?一途な愛か?
江戸川乱歩の『屋根裏の散歩者』、『人間椅子』などをも彷彿とさせる、他人の生活をこっそり覗き見るという古典的なストーリー。
親からも他人からも存在を無視続けられた孤独な青年三井が、クラスメイトの千尋から、初めて自分の名前を呼ばれたことに、この上ない「幸せ」を感じます。そして、たった一度だけ、喫茶店で千尋とコーヒーを飲んだときのことが忘れられません。
11年の月日が流れ、三井は千尋に再び会うことを夢見て、興信所を使って彼女の現在を突き止めます。近所に引越をして、合い鍵を使って留守の時に彼女の家に入り込み、さらには夫婦の寝室のベッドの下に潜り込み・・・と、三井の行動は暴走していきます。
三井のやっていることは、ストーカーなのですが、決して害を与えるものではなく、「ただそばにいたい」という切実な想い。偏愛執着なのか純愛なのかと、考えさせられてしまいます。千尋が夫からひどい陵辱を受けるたびに、不思議と三井の切ない想いがじわじわと伝わってきて、千尋の救世主のようにも思えてきます。
テイストは全然違うのですが、内容的には『君が君で君だ』のシリアス文学編かもしれません。笑
R-18版とR15版があるらしく、R-18版の方を動画サイトのレンタルで見ました。どこがどう違うのか? おそらく、ボカシがあるかないかの違いかもしれません。
wowowの連続ドラマ『罪と罰』(ドフトエフスキー原作)で主人公を演じた高良健吾が、恐ろしいほど印象に残っており、内面に秘めたものが炸裂しそうな何かを抱えており、この『アンダー・ユア・ベッド』でも、好演でした。
ストーカー変態ということに着眼すれば、六角精児さんのような人がぴったりかもしれませんが(NHKのドラマ『真夜中のパン屋さん』で通行人を望遠鏡でのぞき見する役だった)、高良健吾だからこそ、純愛につながる淡いタッチになったのかもしれません。
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