「欽ちゃんの全日本仮装大賞を思い出した!」アンダー・ユア・ベッド(2019) kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
欽ちゃんの全日本仮装大賞を思い出した!
忘れられた存在。高校の卒業アルバムに自分が写ってなくても誰も気づかないってところで、可哀想に思えてしょうがなかった。いや、名前だけなら仮装大賞だって・・・毎回つまらないギャグを連発する仮装が得意の三井くん。10数回も出演しているのに、欽ちゃんに名前を憶えてもらってないシーンが痛々しかったことを思い出すのです。「君、毎回出てるよね」とか言われ続け、香取慎吾が加わってからようやく名前で呼ばれることになった気がします。彼も最初は暗くて、つまらなくて、しかし常連のように出場するのでお茶の間ファンも多いし、そんな根暗な三井くんも出続けたおかげで結婚もしたのです(今年で50回出場してるらしい)。
冗談はさておき、この作品、江戸川乱歩原作だと言われても不思議じゃないくらいに、暗く寂しく変態ぶりを描いてました。屋根裏でも椅子の中でもなく、すでにベッドの下という大胆さ。その大胆さで比べると、ストーリーは全く違うがキム・ギドク監督の『うつせみ』(2004)をも彷彿させます。石の下の虫のように忘れ去られてしまう存在だったからこそ大胆な行動にも出れるし、愛することを知らずにいたからこそ変態的な行動を繰り返すのだろう。
純愛といえば純愛。名前を呼んでくれさえすればいいのだ。開店した熱帯魚店で千尋の口から「三井くん」という言葉が発せられれば、悲劇とならずに済んだのだ。愛の伝え方がわからず、毎月花束を届ける三井。サービスしたグッピーだってすぐ死んじゃうから、合鍵を作って週一で世話をする三井でもあるのだ。そして盗撮、盗聴により千尋が酷いDVを受け、体が痣だらけになっていることも知っている。どうすればいいんだ・・・
高良健吾と西川加奈子。特に女性の19歳当時と30歳で疲れ果てている違いを見事に演じていた西川加奈子は凄い。さらに店の常連客アロワナ君(三河悠冴)がワンクッションを置いてる感じで、彼もまた三井と同じように忘れられた存在だからこそ殺人を犯して名を知らしめたのだろう。この殺人現場中継も三井と千尋の犯罪とミスリードさせるギミックだと思うし、最終的にスタンガンと絞殺に至った要因とも言える。
妄想シーンも紛らわしかったのですが、愛することと性的衝動に駆られることを30歳にしてようやく理解できたととらえました。終盤になっての時間軸を交差させ、思わず真実を見極めようとさせるテクニックも上手いと感じました。もう、安里監督はキム・ギドクか!
ただ、号泣できるシーンがラストのワンショットのみ。これじゃ涙を乾かす暇もありません。もうちょっと余韻が欲しかったところ。映画館を出るとき恥ずかしくなるじゃありませんか。そして、三井役の高良健吾がイケメンすぎて、忘れ去られる男ちゃうやろ!と何度も突っ込みたくなるために最高点から0.5マイナスとなりました。