「罪と自己犠牲」神と共に 第一章 罪と罰 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
罪と自己犠牲
Webコミックの映画化故、漫画チックな作風や演出、大袈裟な演技や展開は否めない。
しかしながら、日本映画は韓国映画にハード・サスペンスどころかVFX大作でも一歩劣る事を痛感してしまう。
ユニークな世界観や設定とたっぷりの見せ場と要素でお連れする、韓国冥界エンターテイメント!
人は死後、49日間かけて地獄の7つの裁判で生前の罪が裁かれる。
その7つ全てで無罪を勝ち取れば、生まれ変わる事が出来る…。
韓国の死後の世界ながら、生まれ変わり、地獄、閻魔大王など、日本とも通じる。万国…と言うより、東洋共通。
殺人、怠惰、嘘、不義、裏切り、暴力、天倫…地獄で受ける7つの裁判はカトリックの7つの大罪を連想。
世界各国の死後の世界を併せたような、冥界設定が面白い。
消防活動中に殉職した消防士ジャホン。
彼の前に、3人の冥界の使者、カンニム、ヘウォンメク、ドクチュンが現れる。
彼らが言うに、ジャホンは生まれ変わり確実な稀な“貴人”。
3使者もまた、ジャホンを含め49人を生まれ変わらせる事が出来れば、彼ら自身も生まれ変わる事が出来る。
前途洋々かと思われたジャホンの7つの地獄の裁判であったが、幾多の困難や怨霊の襲撃を受ける…。
まず目を引くのは、そのビジュアル。
火と炎の定番地獄もあれば、荒れた砂漠、水や氷、地獄とは思えないのどかな地獄も。
それらがVFXを駆使した、オリジナリティーとユニークさと圧倒的なビジュアルで拡がる。
このVFXを駆使した壮大なスケールのスペクタクル映像が本当に見物。
そこに、時折繰り広げられる『ドラゴンボール』的な超人アクションやソード・バトルが迫力あり。
様々なクリーチャーも登場。
これらだけでも日本映画よりレベルが高く、ハリウッド映画にも劣らない。
ユーモアもいっぱい。善人の塊のようでありながら所々抜けてもいるジャホンもさることながら、性格もそれぞれで、軽快なやり取りや掛け合い、ネットや『プライベート・ライアン』も鑑賞している人間臭い3使者のキャラがやはり立っている。
ビジュアルやアクションやユーモアもいいが、スリルや感動のドラマこそ一番の見所。
貴人のジャホンに掛かる罪の疑いの数々。彼は本当に貴人…? 実は、それらには理由が…。
ジャホンや3使者を襲撃する怨霊。その驚くべき正体は…!
ジャホンが自分以上に気に掛けるのは、現世に残してきた母と弟。
冥界巡りや裁判の並行と共に、ジャホンと家族のドラマが語られていく。
それは単に、感動的なものではない。
時に悲しく、時に辛く、そして時には衝撃の告白…。
ジャホンの“罪”は全て、仲間や周囲の人々、そして何より家族を思って犯した事。
そこに、否はあるのか…?
己の罪と対峙する亡者のドラマが、より深く感動的に展開。
生前のジャホンを調査する為、カンニムは現世へ。
冥界でジャホンと2使者に降り掛かる危機また危機。
果たして、ジャホンは貴人として生まれ変わる事が出来るのか…?
3使者はやり遂げる事が出来るのか…?
とにかく、これでもか!…ってくらいの見せ場や要素や展開を詰め込み、最後まで飽きずに楽しめる。
レビュー書き出しの指摘の他に、難点もあるにはある。
幾ら何でもジャホンは善人過ぎる。
各裁判で、ジャホンに疑い→実は…の同じパターン。最後こそ一番の感動を呼ぶが、途中途中は捻りがあるように見えて捻りナシ。
が、
完全無欠の人間など居ない。
が、欠点や否含めて、その人間の全て。
どう生き、何を残してきたか。
同じように、完全無欠の映画も無い。
チープさやベタも含めてその作品の面白味。
本作など、まさにそう!
前後編の2部作。
7つの裁判が2部作に渡って描かれ、前編は窮地に!…と思いきや、
後編は前編ラストに登場した謎の神、3使者の過去が明かされるとか。