劇場公開日 2019年7月20日

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「【”人生賛歌。そして人生はそんなに悪くない。”今作は幼き時に5億円の募金で心臓手術に成功した青年が、その5億円を返すために様々な職業を経験する中で成長する物語である。】」五億円のじんせい NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 【”人生賛歌。そして人生はそんなに悪くない。”今作は幼き時に5億円の募金で心臓手術に成功した青年が、その5億円を返すために様々な職業を経験する中で成長する物語である。】

2025年7月7日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

幸せ

ー 今作は、或るオーディションで一位になった作品だそうである。当然、脚本はオリジナルで監督も今作が初監督だそうである。
  そして、この作品レベルの高さに驚いた作品でもある。-

■幼い頃、善意の募金で集まった5億円で心臓手術を受けたみらい(望月歩)。健康に育った彼は5億円にふさわしい自分であろうとし、周囲からの過剰な期待やマスコミの報道により、”医者になります。”などと無理に作った笑顔で答えてしまうが、実は窮屈な日々を送っていた。そんなある日、身近な自殺願望のある女子高生の影響を受け、SNSで自殺を宣言するのだが、見知らぬ”キヨ丸”というモノから”5億円稼いでから死ねよ!”と投稿され、ほぼ無一文で金を稼ぐ旅に出るのであった。

◆感想<Caution!内容に触れています。>

・作品設定が秀逸である。周囲からの過剰な期待により自殺した人と言えば、マラソンランナーの円谷幸吉を思い出すが、彼は東京オリンピックで銅メダルに輝いた後に、成績が振るわずに自殺している。
 だが、今作のみらいは何も成し遂げていないのに、安易に自殺しようとするので、脳内で”甘えてんじゃねーぞ!”と突っ込んだら、”キヨ丸”というモノから”5億円稼いでから死ねよ!”というラインが入るのである。

・その後、みらいは無一文のまま、ホームレスのオジサン(平田満)に一宿一飯の恵みを与えられるが、彼の貯金50万円を騙し取られた(と、みらいが誤解する)ため、彼はその後、女性に身体を売る風俗店や、たった200万円の借金で無理心中した家族の特殊清掃、オレオレ詐欺などを経験し、少しづつお金を貯めて行くのである。
 みらいは、その仕事を経験する中で、騙されそうになったお婆さんを助けた事で、殺されそうになるが、彼に仕事を斡旋する謎の男(森岡龍)に助けられ、又、ホームレスのオジサンが彼を騙した訳ではない事などを知って行くのである。

■”キヨ丸”の正体が、みらいが小さい時の入院仲間の女の子(山田杏奈)の妹(山田杏奈:2役)である事が分かるシーンは、途中で何となく予測がついてはいたモノの、少し沁みるし、何よりもみらいに関わる殆どの大人が、一見怪しい風体ではあるが、実は善性を少し残した人物が多いという点も良いのである。
 きっと、謎の男たちは、無垢なみらいの姿を見たが故に、心の奥底にあった人間の善性が表面化したのだろうと思ったのである。
 ここで、そういった人たちの姿を嗤う人こそが、”善性を失った哀しい大人”だと私は思うのである。

<今作は、幼き時に5億円の募金で心臓手術に成功した青年が、その5億円を返すために様々な職業を経験する中で成長する物語なのである。>

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