劇場公開日 2019年7月20日

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「生涯賃金2億だって難しいんだから・・・」五億円のじんせい kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0生涯賃金2億だって難しいんだから・・・

2019年10月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 予告編の段階で所得2億300万と掛かる費用が2億100万という話は頭に刷り込んでしまいましたが、渡米して心臓移植しても5億なんてかからないでしょう。と、最初から眉唾で観てしまいました。全体的にファンタジーとして見ればいいのでしょうけど、現実との狭間が埋めきられず、結局、自殺についての社会的メッセージがまったく響いてこなかった。

 5億円をはじめとして、ロトヘブン、ホームレスの住居、詐欺グループ、どれをとっても非現実的だったし、悪い奴と善い人の対比も主観的要素が強すぎる気がしてしまいました。ただ、プロットとしては成長物語でもあるし、裏社会ばかりにスポットを浴びせていたので、それなりに楽しめました。

 「優しくしてやりたい奴とそうでない奴」という、盛岡龍の印象的な台詞もいいのですが、「旅行と旅」の違いという言葉が身近であり、いろんな定義も思いついたりして、自分でもどう使っていたかとか考えさせられました。そんな「旅」する主人公の望来。まず彼の前に現れた、平田満演ずる傘売りのホームレスがいい味だしていました。彼が善であるか悪であるかが大きな流れでもあり、重要な位置を占めてたように思います。

 しかし、裏社会のそうした善悪を中心に添えたおかげで、一般人の気持ちは置いてけぼり。募金をしたから、何かで返せとは言わないので、借金などとは考えないでほしいと願うばかり。そもそも「五億円稼げ」というのも、望来の所得になるだけであり、それを募金した人に還元しなければ借金の意味さえ為さないと、ずっと考えさせられていた。彼の元気な姿と笑顔さえ見せてくれれば募金者は満足するハズなのだ。それを重い十字架を背負いこんだと考えたために自殺を考えたのだろうし、誰か教えてあげてほしい・・・まぁ、ずっと笑顔だったから気づかないのかもしれないが・・・

 自殺についてもこの作品には方向性が見えなかったのが残念。2018年は日本の総自殺者数が9年連続で減少して20840人となったが、未成年者の自殺者数は過去最悪の599人。「社会に未来がない」と言った千春はかなり鋭いと思うのだが、ほとんどの原因は学校、進路、いじめによるもの。それに対する問題提起があれば、もっと締まった作品に仕上がっていたのだろう。

 あと、『ONE PIECE』は全く知らないので、ついに終わったのかと信じてしまいましたw

kossy