「この映画のテーマについて」ドラゴンクエスト ユア・ストーリー あさんの映画レビュー(感想・評価)
この映画のテーマについて
最近ネットフリックスで見ました。
評判の悪い作品でしたが、
その悪い評判の中には誤解されている所もあります。
まず、この作品のテーマは
「いつまでも子供時代やってたゲームの世界にすがるな」
というものではありません。
例えフィクションの世界であっても、
「思い入れのある作品は大人になっても大切なものである」
という形で一応物語が締めくくられます。
ただ、そのテーマを扱うのであれば普通に原作通りの筋書きを
そのまま出せば、「ああ、この作品はやっぱり自分にとって大切なものだ」
と、普通に感じられたんじゃないかなーと思います。
「思い入れのある作品は大人になっても大切なものである」
というのを多くの人間は自分で感じる為にこの映画を見たと思います。
ただこの映画はそれを自分で感じる余地を消し、製作者としてはっきり
言葉に出して押しつける形になってしまったのではないかと感じました。
もちろん良いなと感じた所もあります。
例のオチまでの流れは多少の改変があり、個人的に思い出がある分
納得は出来ないものの、一つの映画としてコンパクトにまとまっていました。
そして、キャラクターの表情の豊かさも原作にはない印象を与えてくれました。
しかし、そうして積み上げて来たこの映画の良い部分は、
オチの敵であるウイルスを倒す、という所に向かってはいないよなぁ
というのが見終わった後の素直な感想です。
話がクライマックスになり、それまでの物語の本筋と関係のないものが
急に出てきてなんとなく倒したという印象で、
映画として見て盛り上がった気持ちが雲散霧消しました。
あのオチは、ゲーム原作映画としてだけではなく、単純に映画としても
積み上げて来たものを全て茶番にしたように見えます。
そして、この途中まで積み上げて来たものを乱雑に捨てるような話の展開は、
原作へのリスペクトを全く感じられないものです。
作品内で語られるテーマは、思い入れのある作品をいつまでも大切に想う、
というものなのに、その思い入れのある作品を雑に扱う。
この言っている事とやっている事が違う、というのがこの作品の良くない所だと思います。
そして、初めに
「いつまでも子供の頃にやっていたゲームに縋るな」
というのはこの作品のテーマへの誤解だと書きましたが、
誤解というよりも、この映画を見て素直に感じる事なのです。
映画内で言っている事は作品の思い入れに対して肯定的な事ですが、
映画内でやっている事は作品の思い入れに対して否定的な事なのです。