「ドラクエファンは らくたんといかりの ダメージをうけた!」ドラゴンクエスト ユア・ストーリー 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
ドラクエファンは らくたんといかりの ダメージをうけた!
言わずと知れた国民的ゲームをフル3DCGで初の映画化。
昨夏、色んな意味で話題を集めたのが、酷評に次ぐ酷評の嵐。
実は公開中にネタバレ記事を読んでしまい、その酷評の理由も分からんではないが、それについては追々。
酷評以前に、私には問題が。
実は私、『ドラクエ』を全くやった事の無い非国民。
…いや、全くと言うのはさすがに語弊。友達がやってるのを横目で見て、コントローラーを握らせて貰った事ぐらいはあるが…って、やっぱり全く未プレイみたいなもん。
なので、『ドラクエ』初プレイ者の視点で感想を。
先に良かった点を述べておこう。
開幕の懐かしのファミコン画像はファンなら感涙モノなのではなかろうか。
物語が始まると、ハイクオリティーのフル3DCGに。『STAND BY ME ドラえもん』『ルパン三世 THE FIRST』の山崎貴監督の手腕が光る。
そして、すぎやまこういちによる音楽! ゲームやった事無くてもあのテーマ曲が流れると、無条件で盛り上がる。(ちなみに私がすぎやま氏を知ったのは『ゴジラvsビオランテ』でした)
良かったのは、これくらい。
映像や音楽だけ。
だって、後は…。
まず、ストーリー。
幾ら何でも展開早過ぎでしょ! これはゲーム未プレイ者でも一目瞭然。
少年時代のエピソードなんて、ダイジェスト。…いや、全編に渡って駆け足のダイジェスト的。
基になったのが、シリーズ屈指の名作と言われる『~Ⅴ 天空の花嫁』。(もっと詳しく言うと、リュカなど主人公の名前はゲームを基にした小説版と同じらしいが、無断使用などでこれまた裁判沙汰になるくらいの問題に…)
親子3代に渡る壮大なドラマが展開されるらしいが、多くのレビューでも辛口指摘されている通り、100分に収めるには無理があり過ぎた。
リュカの少年時代、青年時代、そして最終決戦と、本来なら3部作が妥当。
敵モンスターを仲間に加えたり、ビアンカとフローラの2人のヒロインから花嫁を選べたりがゲームの人気らしいが、そもそもの作りが淡白で薄いので、面白味や醍醐味が伝わって来ず。
物語上のキーである“天空の剣”や“天空の勇者”もイマイチ盛り上がりに欠ける。
RPGの醍醐味であるレベルアップの興奮は全くナシ。故に、剣での攻撃や魔法の呪文もいつの間にかに取得している。
ビアンカとの再会など伏線が張られていないので、一見さんお断りの唐突過ぎ。
笑いもダダスベりで、ファミリー向けにしたかったのか、ワクワクの冒険にしたかったのか。
挙げ出したらキリが無いので、この辺で。
…あ、最後に一つだけ。声の出演にまたも話題性だけで集められた豪華な面々。一応巧い人も居れば、お下手な人も…。
さて、問題のラストについて。
何も知らずに見たら、お口あんぐりびっくり仰天になっていただろう。だって、
冒険ファンタジーかと思いきや、『ドラクエ』好きだった現実世界のサラリーマンが体験していたリアルバーチャル世界だった、って…。
しかもラスボス的なコンピュータウィルスが現れ、「大人になれ」「ゲームなどくだらない」とお説教…。
一応ゲーム依存を警鐘しつつ、リュカ=現実世界のサラリーマンを通して、ゲームや『ドラクエ』への愛を訴えてはいる。
…でも、捻りある作りやいい事を言ったような気をして、これはとんだ見当違い。
ゲームの映画化で、ゲームを批判するような事を言って、ゲームを愛する者を敵に回して、何やってる!?
映画で言ったら、映画愛をたっぷり語って、最後の最後に映画なんてくだらないと冷笑したようなもの。
特に問題なのは、監修に『ドラクエ』の生みの親の堀井雄二が携わり、きっとこれが山崎の本音なのだろうという事。
本当に『ドラクエ』愛や思いあって本作を作ったのか…?
自分はゲームは『スーパーマリオ』好きだが、もしこんな映画化になったら…?
本作酷評の『ドラクエ』ファンの方々同様、落胆&ブチキレるだろう。
…え? 『マリオ』の映画化に駄作の『スーパーマリオ 魔界帝国の女神』があったじゃないかって?
あれはあれで、愛すべきカルト駄作だからいいんです。
今作のラストは賛否両論だと思いますが、製作陣のことを悪く言うのはお門違いだと思います。
映画は観る人の捉え方次第ではありますけども、製作陣にドラクエ愛が無いわけがありません。
ラストの展開は確かに冒険したと思います。
でもそれは所詮ゲームという心無い発言者に対しての製作側からの「キャラクター達はそこに確かに存在していた」という想いを伝えています。
製作側のドラクエ愛に溢れた作品だと思います。