「オチ抜きにしても悲しかったです。」ドラゴンクエスト ユア・ストーリー まるるさんの映画レビュー(感想・評価)
オチ抜きにしても悲しかったです。
論外のオチは置いておいて、それ無しにしても、普通に私には無理な作品でした。
それはユアストーリーではなく、「ドラクエ5の映画」だと思って観に行ってしまったからです。
尺の問題でダイジェスト風になったり、様々な部分が削られるのはあらかじめ予測がついていましたし、そこは仕方がないです。
ですが、削られた個所と残しておく箇所が、ドラクエ5のストーリーの「悲壮感」や「家族との絆」の「重さ」を軽くするものでしたので、
これは「ドラクエ5風」の別物の作品です。
しかしストーリーは原作をなぞって少しアレンジされているものです。
明るくコミカルなドラクエ5として受け容れられればいいのでしょうが、その方向性では「ドラクエ5」の意味が無いと思います。
原作のストーリーを自分流に書いてみた素人のWEB小説二次創作だなといった印象でした。
あの主人公の性格では、パパスにもマーサにも拘りもなければ、ビアンカを選ぶ理由(幼少期の関わり・リボンが無い・山奥の村に住み親を看病している等の設定)
も薄く、「ドラクエ5」のストーリーの深みが感じられません。グランバニアもありません。そこでの出産でもありません。サンチョの立ち位置も分かりにくい。
繋がりが薄く、親子三世代にする意味も無いと思います。
石造のオークションやジージョのシーンも違うものに変わり、更に主人公は石造にされていた間の記憶もありませんし。奴隷時代も終始ギャグのように描かれていて、苦労としては受け取れません。
マーサの最期にパパスが迎えに来るといったシーンもありません。
あと、ゲマが下品です。私のイメージですが、ゲマはもっと上品な悪役だと思っています。
ヘンリーの話し方・性格の違いについても気になってしまいます。ラインハットの描写も兵士のみで、あらゆることが省かれましたので、パパスに恩を感じるヘンリーにも
それほど説得力がありません。
幼少期の妖精の国もない上に、「子どもだったから妖精が見える」設定もなく、主人公が妖精の試練?なるものを処理していただけですので、
オーブが壊れてそれを取り戻す過程の描写こそ削った方が良かったかな、と思いました。
BGMの使い方も不満です。5以外のBGMが使われていた事です。
意味を持たせたわけではなく、単に他シリーズの曲を「盛り上げるためだけ」として使われている印象を受けたからです。
個人的には、ドラクエ1~3をモデルにしていたのならコミカルな印象も相まって、非常に楽しめた気がします。
「ドラクエ5」のストーリーを評価している人はショックを受けると思います。
私は映画を見てはじめて落ち込みました。でも製作がこういう方向性なら仕方ないよね…と思いましたが、悲しくて、映画館で泣いてしまいました…。
ドラクエが様々な形で展開していくことは長年のファンの一人として純粋に嬉しく思いますが、絶対に「ドラマ的で壮大なドラクエ5の映画作品」としては観に行ってはなりません。