「「はいはい、ドラクエ映画作ればいいんでしょ?」って監督の顔が目に浮かぶ」ドラゴンクエスト ユア・ストーリー ひよさんの映画レビュー(感想・評価)
「はいはい、ドラクエ映画作ればいいんでしょ?」って監督の顔が目に浮かぶ
「君の好きなドラクエが映画になるらしいよ!」
「しかもなんと内容はⅤらしいよ!」
と夫から聞いて心から楽しみに楽しみに公開を待っていました。
そこに聞こえてきた不穏な噂。
レビューには
「ドラクエ好きなら見に行かないほうがいい」
という重苦しいコメントの数々。
・・・これは見に行くのをやめようと思い
「あーあ、どうせ見に行かないのならば、ネタバレを読んでもいいか」
とネタバレレビューを見るうちに、評価が低い方々も映像と音楽については、
結構良かったと書いていらっしゃる。
なるほど、残念なのはストーリーだけなのね。
CGで生き生きと動くモンスター達、劇場を震わせるであろう壮大な交響曲、
「うわーやっぱり見たいね、見たいよ!」
で、心変わりして9日のレイトショーで見てきました。
場内はガラガラでした。
ストーリーについては皆様が書いておられる通りです。
ラインハットへ出向くまでの主人公の子供時代は
ファミコン(スーファミ)画面を紙芝居的に見せられながら駆け足で説明して終わり。
ビアンカも、その後のストーリーのキーとなるレヌール城で手に入れるオーブも一瞬そのなかに出てくるだけです。
非力なちびっこ2人がなんとか力を合わせてレヌール城に巣食うモンスターを退治し、ビアンカとの生涯の絆を作ることになるはずの冒険をはしょってしまい
「金持ちで美人で性格もいいフローラを振ってビアンカを嫁に選ぶ気持ちになるの?」とか、色々疑問に思いながらも駆け足で進むストーリーを追うのに必死でした。
ゲームの効果音がやたらと使われるのに「いちいちうるさいな」と閉口気味でしたが
あれは「これ実はゲーム中、ほら、ゲーム中という伏線なんですよ」いう意味だったんですね。そう考えるとますますイラッときますね。
あの最後のオチにかける時間を使えば、もっと重要なエピソードを色々と盛り込むことができたのに・・・
しかし息子が天空の剣を鞘から引き抜く場面では、
美しい映像と音楽とがあいまってウルッときましたし、ここはとてもよかった!
個人的にはここがこの映画の最大のクライマックスでした。
使用される魔法に工夫がないとか細かいところには目をつぶり、
その後、ゲマとの戦いが佳境へ入り、
ついに監督様から観客への例の無粋なメッセージの投入。
もしも全く予期せずにただ没頭して見ていたとしたら・・・お察しします。
私の場合は、あそこであれが出て来ると分かって見ていたので
「来るぞ、来るぞ、そろそろ来るぞ!」と覚悟し、
心頭滅却して構えていたため
そこまでダメージを受けずに済みました。
でも、昔からドラクエをプレイしている大人はともかく、
小学生以下のチビッコ達に見せても良いんですかね?夢壊さないの?
子供さんへ対しても「大人になれ」と意味不明のメッセージを突然投げつけることになりますがそこのところ、製作陣は本当に全く考えなかったんでしょうか。
夏休み中の上映なのに、首をひねります。
私自身は大人というか、さらに歳を重ねた中高年にあたりますが、
ゲームはもう数十年してませんけれど、
過去の自分がゲームをしていた時間が無駄だと考えたこともありません。
現実世界ではないかもしれないけど、他の世界を疑似体験するところは
お伽話の本を読みながらワクワクするのと何らかわりはない。
情景を想像で埋めて楽しんでいた懐かしいドラクエワールドを、時代を経て技術の進歩により可能になったCGで生き生きと動くモンスター達と壮大な音楽で楽しみたいという気持ちで映画館に足を運んだわけなので、大人になれ、ユアストーリーですよと言われましても「はい、大人ですが私のストーリーではないですね。」という感じ。
思いつきの無粋な改変に懐かしい旧友(ドラクエ)を蹂躙された気分です。
ウィルスとVRのオチを受け入れるとしても、どうしても2点よく分からなかったんですが、1点は、ウィルスのミルドラースは出てきたけど、元々ゲームのストーリーのなかにプログラムされていたはずの本来のラスボス、ドラクエのミルドラースはどこに行っちゃったの??ウィルス版ミルドラースを倒してプログラムが元に戻っても、出て来ず平和な世界になってたけど。
もう1点、スラリンにウィルスワクチンが仕込まれていたのは分かったけど、あれ、なんでワクチンが剣の形をしていたんですかね。ウィルスワクチンって映像が出るようにはプログラムされてない気がして。わざわざ毎回VR体験者に剣の形にした映像を見せてウィルスに突き刺してもらう駆除システムなのか?・・・ずっと考えてるんですが謎です。
それにしても、この作品に期待していたであろう映画館各所も残念でしたね。
上映開始10日も経たないうちに館内ガラガラとは。
納得いかないストーリー展開に我慢して押し黙って最後まで見続けることがストレスとなるため、いっそ応援上映にしておなじみのキャラクターが出てきたとこで
「スラリーーーーン!!」
「ゲレゲレー」「違うぞプックルだー!」「いや、チロルだー!!」
「いよっビアンカ、待ってましたー!!」
とか叫んでよい。
また、ウィルスミルドラースが出てきたら
「ひっこめアホー!!!!」とか叫びながら
ポップコーンや節分の豆などをスクリーンに投げつけて
仕事のストレスや1年の邪気を追い払うという大人向けの上映会にしたらどうですかね。
最後に、
「ドラゴンクエスト」なのに、その肝心のドラゴンのCGや登場場面がショボいのは、監督さんにはドラクエ愛がないことがよく伝わってきました。(ブオーンと比べるとモブ扱い)
長年依頼を固辞してたけど、ずっと頼まれ続けるうち、おもろいオチを思いついちゃったから作ることにしたという監督さんのインヴュー記事を拝見しましたが、才能ある監督さんに無理矢理押し付けちゃったから、彼が「ピーン!」と思いついちゃったオチを、制作途中で「いや、それはやっぱり違うよ」と周りの誰も止めることができなかったのだな、と拝察します。どんなに才能があっても「愛」がなければ良いものは作れません。関係者は反省して欲しいです。