「超絶展開についていけない」ドラゴンクエスト ユア・ストーリー ya98789さんの映画レビュー(感想・評価)
超絶展開についていけない
世間でも酷評が多数となっているこの映画だが、個人的にもあまりにひどいと思う。
色々あるが特に酷いと思ったのは以下の2点。
まず、タルに乗ってヘンリーと主人公が逃げる場面。命がけでヨシュアがマリアも入れた3人を助けるのではなく、なんと主人公が自分とヘンリーの顔にウ○コを塗ってタルの中に入り死体のフリをするというメチャクチャな話になっている。タルの中を確認したオークたちがウ○コまみれの2人を見て、「クサい!サッサと流せ!」と言ってタルを流し脱出に成功する。このあとしばらくこのクサいネタを引っ張る。
そして、もう1つはもう散々言い尽くされているがラストの大どんでん返し。実は主人公はドラクエの主人公ではなく、VRとなったドラクエ5で遊んでいるただの男。そいつがミルドラースとは似ても似つかない謎の仮面男に「俺はこのゲームに侵入したコンピュータウィルスだ。この世界は所詮作られたプログラムなのだ。こんなものにのめり込まず大人になれ!現実へ帰れ!」と説教されてしまう。どうやら、ゲームの世界に居られるのか、現実世界へ送還されるかの瀬戸際であるらしい。
観客はこの超絶展開にキョトンとする他ない。何が起こったのかとっさには理解できないままスクリーンを見ていると、これまで共に冒険をしてきたスラリンが突然、おじさんのような声で喋り出し「実は私はアンチウィルスワクチンだ!さあこれを使って奴にトドメを!」と力強く主人公を導くのである。
ウィルスの次はワクチンである。観客はますます意味が理解できないまま、なぜか天空シリーズとは無関係なロトの剣を手にミルドラースには見えないウィルスにトドメを刺す主人公。ここで耐えきれなくなったのか、何人かの観客がおもむろに席を立ち上がり、そのまま劇場を後にした。
さっきまでドラゴンだ、オーブだと言っていた世界観が突然VRだのコンピュータウィルスだのの世界観に変わったのである。常人に理解できる展開ではない。
監督や脚本は客をアッと言わせたかったのだろうが、やっていいことと悪いことの区別は付けるべきである。
主人公はその後もゲームの世界に留まり、そしてエンディングを迎える。
さんざん客を振り回した後のフォローなのか「ゲームであっても1人じゃないんだ。ゲームであっても素晴らしい世界があるんだ」と言ったメッセージ性を含ませたエンディングになっているが時すでに遅しである。
「俺、1人じゃないんだよな」という主人公に対し「当たり前でしょ、みんなここにいるじゃない」と返すビアンカ。普通にミルドラースを倒していれば感動的なセリフになったのに、あの展開後では「でもあなたプログラムなんですよね?」と思うしかない。
いわゆるメタ展開というものをあまりに粗雑に扱ってしまったことが全てを消し去ってしまった作品。音楽もCGもそして色々言われている声優陣も及第点以上の出来なのに(と個人的には思う)、シナリオの独りよがりがそれらの努力を無駄にしている。これはそんな作品だと思った。