「気軽に地獄に行ける作品、観る前の人生には戻れません」ドラゴンクエスト ユア・ストーリー かにぱんさんの映画レビュー(感想・評価)
気軽に地獄に行ける作品、観る前の人生には戻れません
気軽に地獄に行けますので、相当の覚悟をしてから劇場に足を運んでください。それでも即死レベルのダメージをくらいます。
まず初めに断言しておくと、この作品は例のシーン(ラスト10分)までは決して駄作でもクソ映画でもありませんでした。華麗な映像に生き生きとしたキャラクター、モンスターたちの造形も完成度が高く、DQおなじみのBGMもフルオーケストラversionで映画を盛り上げてくれます。あれだけを聞きに映画館に行きたいくらいです。ストーリーや演出、キャラ改変に関しては大分ご愛敬な部分がありましたが、「ファンサービス映画」と考えればある程度の満足感を得られたはずです。
ラストシーンが恙なく終わってさえいれば、色々と突っ込みどころはあるものの家族や友人で映画の話題をアレコレ楽しんでいたことでしょう。「DQの登場人物がスクリーンで見られて最高だった!」「あのクオリティでDQ新作のムービーが見れるかなぁ」「まぁ駆け足だったけど、興行成績が良ければ他のシリーズも映画化されるかも??」と期待に胸を躍らせたかもしれません。
そんなささやかな願いを虚無と絶望に変え、ファンの心を怒りで満たしたのは、ひとえに脚本の稚拙さ、傲慢さ、無神経さ、そして何よりゲームやファンタジーなどの虚構が持つ力を何一つ信じていない非人道さにあります。
この映画レビューはネタバレを存分に含んでおりますので、その点ご留意ください。
【良かった点】
・3Dの美麗さ。どこか欧米の3D映画で見たことがあるような光景が多く見られるものの、3Dアニメで出遅れているこの日本で作られたと思えばこれからに非常に期待ができるクオリティでした。
・キャラクターやモンスター造形の完成度。キャラクターに関しては少々バタ臭く日本人好みではありませんが、ビアンカもフローラもちゃんと可愛かったです!!何よりモンスターの造形は理想通り。スライムはぷよぷよ可愛らしく、オークやギガンデス(サイクロプスだったかもしれない)、キラーマシン、ゴーレム、ブオーンなどの勇猛なモンスターの動きも生き生きと迫力があり大変興奮しました。この映像制作陣だけでDQモンスターが沢山出演する外伝映画作りませんかね?あのクオリティで、ももんじゃやおおきづちやクックルも見たかったなぁ。プクプクも可愛いですよね、海のモンスターも見てみたかったです。ほんと「ドラゴンクエストYOURSTORY~わくわくモンスター大集合!みんなで大運動会~」とかだったら良かったのに。
・ゲマ。そう、あのゲマです。デザインも昔のものを踏襲しながらよりおどろおどろしく一新されています。そのゲマに命を吹き込んだのが吉田鋼太郎氏です。彼の熱演によってドラマティックさに締まりが出ています。もし今後映像化が続くようであれば今後もゲマは吉田氏に演じていただきたいですね!最高の悪役でした!
・オリジナルデザインのキャラクター。DQおなじみの鳥山明氏デザインのキャラデザインでないことに私を含め多くの方が不満を抱いたでしょうが、上映が始まってその不満はなくなりました。またラスト10分の展開から考えるに、このデザインで良かったのだと納得がいきます。最初はクリエイターがオリジナリティを出したいとか3D制作の都合とか色々予想していましたが、見終わってみればそれはある意味制作者の「優しさ」だったのかもしれません。もしあのシーンで鳥山明氏デザインのキャラクターがあんなことになってしまったのであれば、私は完全に心が折れていました。
【悪かった点】
・シナリオ、キャラ改変、俳優声優の多さ。他の方も指摘されてますので多くは語りません。声優さんは皆さん頑張っていらっしゃったものの、やはり違和感は最後まで拭えませんでした。主人公の佐藤さんとゲマ役の吉田さんは本当に自然で魅力あるキャラに仕上がっていただけに残念です。ケンコバはケンコバでした。シナリオやキャラ改変についても言及したいのですが、ここの問題は最終的なちゃぶ台返しで何とかなってしまうのです。信じられませんけれど。この映画の中ではきちんと筋が通っているのです。全く納得ができませんが。
・BGMに対するデリカシーの無さ。DQYSでは天空シリーズの音楽が作品を盛り上げてくれます。しかしその使い方が無神経すぎます。映画化するにあたって全てのBGMをVのものに統一するのは難しかったと思うので、仕方ないとは理解できるんですが。
・世界設定無視。そろそろ突っ込むのも嫌になってきました。魔物使い設定は一度しか生かされていません。(スラりんが山ちゃんだった為)
・あと、ルドマンにプロポーズしちゃうくだりが絶対に必要です。この作品の前提条件を考えればあそこでルドマンにいかないわけがないんですよねーーー。プレイヤーなら絶対にやるんですよ、絶対に。「なんで俺、ルドマンさんにプロポーズしてるんだろ……?」という所から最終的なネタばらしの説得力が生まれるんです。記憶は改変されてても習慣は自然と身体にしみついてしまうじゃないですか、プレイヤーなら。そういった設定への細かい説得力を積み上げてからちゃぶ台返しするもんじゃないんですかね????
・もう言及するのも嫌なんですが、このDQ5と思われるストーリー、実は全部VRなんです。どっかのアトラクションに設置されてるドラクエVRなんです。今までの物語は主人公の青年がプレイしていたゲームに過ぎないんです。だから「YOUR STORY」なんだよね。は?YOURじゃねーだろ「誰か’s STORY」に今すぐ変えろよボケーーーー!
なお、このゲームは色々と設定を変更できるようで少年時代をスキップ出来たり事前にどっちと結婚できるか指定できたりします。は??そんなゲーム知らねえぇーーー!そんなDQ知らないんだけど?
コイツみたいに少年時代をスキップするような奴と一緒にすんな!ビアンカと一緒に夜アルパカの町から抜け出したり必死でレベル上げ&金策してブーメラン買って感動したり妖精の国の氷の洞窟で右往左往したりベラとの別れが悲しかったりゲマを倒すためにラインハット周辺で無駄にレベル上げしたりするけどやっぱりパパスの死は防げなくてしょんぼりするのがDQ5ファンだろ!コイツみたいに少年時代スキップするような奴に感情移入できるか!!!!
あとここの考察は言いがかりになってしまうかもしれないので話半分に聞いてほしいんですが、もしかして息子しかいないのってソイツが設定したからですかね?双子設定をいじったとか?そうだとしたら心底軽蔑するな…言いがかりかもしれないけど。
ゲマを倒したと思ったらペプシマン、いや魔王ミルドラースを名乗るコンピューターウイルスが登場して周囲が一変、背景も仲間たちも大切な家族も単なるテクスチャになってしまいます。そう、彼らは単なるデータなんです。それをまざまざと見せつけられるんです。そこまでする必要性ある???これ青年以上にDQファンの我々観客が見せつけられてるんですよ?一番の被害者は観客ですよねコレ?
そして「大人になれよ」って言い放つんです。その説教に激おこ青年が「ゲームも現実なんだよー」的な事を(乾いた笑いしか出なくてあまり覚えていません)言い放ったと思ったらスラりんから山ちゃんの声が出て「俺はアンチウイルスワクチン!」って言ってスラりんがロトの剣になってウイルス撃破。これはゲームの中だけど大切な現実で思い出なんだぜ!!ENDです。流れ的にはほぼソードマスターヤマトですね。ほんとソードマスターヤマトならどれだけ良かったか。でも残念!これDQの看板背負って集客しちゃってるんです!!
きっと制作側は、これ「YOUR STORY」だからね!よく読まず勘違いしてDQVだと思い込んじゃう観客が悪いよね!こっち一言も「ドラゴンクエストV~天空の花嫁~」とは言ってないじゃん!勘違いしたお前らが悪い!って思ってるに違いないんです。詐欺師みたいなモラルですよね。クリエイター達に不信感しかありません!吐き気を催す邪悪!!!!
よく「制作者はゲーマーの心を肯定してるんだよ」「ゲーマーを応援しているんだよ」という擁護が見られますが、たとえそれが制作側の本心だったとしても結果的に悪辣極まりない傲慢な押し付けだということは覆せません。しかもその方法がこの上なく最悪です。DQの魔王だってもっと正々堂々と相手を打ちのめしていますよ。
彼らのやっていることは「邪悪なマッチポンプ」です。世界や仲間、家族をテクスチャにし単なるデータを見せつけ、さも世間からの悪意があるように思わせていますが、その悪意を持っているのは制作者自身です。(この内容を書いたのは8/6なんですが、その後制作者の呟きでばれちゃいましたね!当たってました!!やっぱり内心そう思ってたんですね!映画全体に滲み出てるんだよクソが!)悪意を観客に浴びせた彼らは宗教家のようにすり寄ってくるのです。「辛かったろう、悲しかったろう、でも私は君のそばにいるよ」ってどの口が言ってんねんとしか思えないですよ???殴っては優しくするを繰り返すDV加害者のような所業、とはよく言ったものです。
DQシリーズはすでに30年以上続いており、ゲーマーだけがやるゲームではないんです。とても大衆的でお茶の間の普通の人々が楽しんでいる、ごくごく当たり前の娯楽なんです。日本人のほとんどが、と言ったら誇張でしょうし不快に思う方もいらっしゃるかと思いますが、ずっと昔から市民権を得られているゲームなんです。そりゃ宿題もせずDQばかりやっていたら「ちょっとアンタ!宿題は!?ピコピコばっかりやってるんじゃないよ!(母ちゃん掃除機アタック!」されるでしょうが、後ろ指をさされる事なんてここ10年はないでしょう。制作者は一体どの時代からやってきたのでしょうか?大人がDQをやっている位で批判される時代ではないんです。それなのに「周りの悪い奴ら(自己紹介)は大人になってゲームなんか止めちまえって言うかもしれないけど!」「僕たちは君のゲームへの情熱を応援するよ!」「その思い出はかけがえのないものだから!」など上から目線で言われても「ハァ??」としか思えないでしょう。
DQファンが思いもよらない方向から悪意を見せつけられ、その隙に付け入りフォローするのは、それは善良だと言えるのでしょうか?本当に観客を誠心誠意、応援しているのでしょうか??自分の指示で悪党に村を襲わせたところに救世主として登場する悪辣なド屑野郎の所業に思えます。
ぬいぐるみのマスコットを気絶させ身ぐるみはがし「中身はただのオッサンだぜ!」「でも嘘っぱちなキャラでもお前には大事なんだよな!分かるよ!」「君はそれでいいんだぜ!」ってまたぬいぐるみを元に戻せば許してもらえると思っているんですか?おっさんが気絶していてこの顛末を知らなくて良かった……最後はそんな悲しい安堵感に襲われるんですよ?ビアンカもアルスも知らなくて良かった。あんな目にあったなんて、本人には絶対に知られたくない。彼らが一体何をしたというんですか??陳腐なテーマの為に彼らを弄んで、心が痛まなかったんでしょうか?ああ、制作者にとっては単なるデータだからどうでもいいんでしょうね。こんなやり方、どんな原作でもやっちゃいけないんですよ。原作が漫画であれアニメであれゲームであれ。大人になれという前に人間になってください。
多くの方はもうDQの映画化を望んでいらっしゃらないかと思いますが、私は是非またチャレンジして欲しいですね。この映画で一番傷つき苦しんでいるのは間違いなく山田孝之さんだと思います。山田孝之さんの渾身の演技を、本物のDQ映画で見てみたいのです。今は大変お辛いかと思いますが、いつかまた劇場でお会いしたいです!その時はゲマ役の吉田さんもご一緒に。佐藤健さんの演技も素晴らしかったです。ですが次はちゃんと本物の「リュカ」役でお会いしたいです。きっと素敵だと思いますよ!
ということで本当ならマイナスいちおくまん点を付けたいところですが、携わった方々に感謝をして☆1を付けたいと思います。
さーさーさんコメントありがとうございます。
心中お察しします。なんとお慰めしていいのか・・・。ゆっくりと心の傷を癒されて下さい。
今、私は久美先生のDQ5を買いなおし何とか心の平穏を取り戻そうとしています。やっぱり原作()は素敵ですね、心が洗われるようです。