「あの展開にするならもっと練って欲しかった」ドラゴンクエスト ユア・ストーリー E-DOLLさんの映画レビュー(感想・評価)
あの展開にするならもっと練って欲しかった
とりあえずBGMは素晴らしかった。流石のドラクエオーケストラ。ただ、ドラクエⅤガチ勢の知人が「ドラクエⅤ以外のBGMまで使ったのは余計。ドラクエⅤにこだわって欲しかった」と言ってたので、人によっては不満があるのかも。
CGのクオリティは抜群申し分なし。ビアンカかわいい。ルドマンそんな見た目かw
声は、申し訳ないが私は不服だった。極端に下手ではないが、声を張り上げる所がいまいち。ちゃんと声優起用して欲しかった。
さて本題、みんな話題のあの大オチ。
みんなが興醒めした理由は明白。創作上のお話を急に全部作り物だと登場人物に言わせてしまった事。例えば、ドラマやお芝居を観ていて、クライマックスのシーンで「これ全部お芝居だよ台本だようつつ抜かしてないで大人になりなよ」とか言われたら、創作世界に没頭していた人達は急激に冷めるだろう。その後フォローするような展開があってももはや頭に入らない。没頭から抜け落ちてしまったのだから「その感動も作り物でしょ」という冷めた感情しか残らない。
創作者は、その作品が作り物である事を決して断じて明かしてはいけないのだ。それはネズミの国のネズミさんに中の人などいないと徹底するのと同じ。
ただ、あくまで、あくまで私見を言うなら、自分はあの展開にする事自体は別に構わないと思った。最後の敵が『現実』で、それをドラクエ愛で打ち勝つと言うならそれもありだと思った。そうした作品を過去に見たことがあるからだ。
だが、本作におけるその展開の作り込みが雑過ぎた。その点が大いに不満だった。
9割完全なファンタジーを見せておいて(道中ゲームを彷彿するシーンはあったが、普通にただの演出だと思ってた)、最後に急展開でメタオチ。展開の持っていき方が下手過ぎる。
そして何より許せないのが、その解決をデウスエクスマキナ(急に力を持った何かが現れて解決してしまうご都合展開のこと)にした事。
突然スラリンが現れて「実は私は管理者だ!アンチウイルス持ってきた!」で、それぶつけておしまい。雑過ぎる。確かに物語の最初からスラリンがやたら映ってたが、伏線としては弱い。それに何よりこのオチにした事で、主人公の想いなど何も関係ない勝ち方をしてしまった。主人公が希望を持とうが、絶望して死を待とうが、結局スラリンがやって来て勝ててしまうのだ。主人公の「ドラクエはもう一つの現実なんだ!」なんて叫びも何の意味もない。もしスラリンが来てなかったら主人公は普通に負けていた。ドラクエの世界を「少しは大人になれ」と侮辱してブチ壊しておきながら、その解決を管理者という第三者にやらせてしまったのだ。それは主人公の想い、ひいては視聴者のドラクエへの想いを無視した最低な展開と言って過言ではない。結局最初から最後まで「ユーザー達のドラクエへの想い」は『アンチウイルスが無ければ勝てないくらい無力』という状態のまま終わらせてしまったのだ。これが本作を低評価する大きな理由である。
もしラストが(せっかく「思っただけでプログラミングされてしまう」というご都合設定があるのだから)、
主人公のドラクエへの熱い想いが、あの真っ白にされてしまった空間にキャラや世界となって具現化し、「これが僕の、いや、ドラクエが大好きなみんなの想いの力だ!!子供だとか大人だとか関係あるものか!!」とか言って、みんなの想いが詰まったドラクエキャラ達総出でミナデイン!!!とかやってラスボス倒せば、「みんなのドラクエへの熱い想いが現実の理不尽を吹き飛ばした」ようにできたのではないだろうか。無論、冒頭で言った通り冷めきった客には何の感動もないだろうが、「ユーザー達のドラクエへの想いを尊重する」という体裁は取れたと思う。今作にはそれを感じない。せめて最後の主人公の回想シーンをもっと「ドラクエ超超大好き!!!」と思わせんばかりの描写をすべきだった。
今回の炎上の原因は、ドラクエが大好きなみんなの想いを無視した展開と解決にしてしまった事だと思う。