劇場公開日 2019年8月2日

「チョコだと思って食ってたらウンコだったみたいな映画」ドラゴンクエスト ユア・ストーリー サイコショッカーさんの映画レビュー(感想・評価)

1.0チョコだと思って食ってたらウンコだったみたいな映画

2019年8月4日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

視聴後から現在に至るまで、丸二日間ずっと怒りに苛まれ、不眠症を再発した。
自分のような不幸な人間を少しでも減らすために、わざわざこのアカウントを取った。
ユアストーリーによって刻まれた人々の心の傷が、少しでも早く癒えることを祈る。

最初に、
この映画を賛美し、他者に勧めている人達に言いたいことがある。
この映画は非常に人を選ぶ映画だ。ジャンルとしてはホラーだと思う。
検索してもらえればわかる通り、いや、実際に観たならば劇場の冷え方を肌で感じたのではないかと思うが、過半数の人間はこの映画を週末の友として選んでしまったことを後悔しているものと思われる。
はっきり言って、自分がうつ病だった頃にこの映画を観ていたら、三日後には自殺している。
自分と同じ感性を持つ相手に対してなら良いが、そう確信できない人々に対してこの映画を勧めるのは、控えて欲しい。
あえて嫌いな人間に勧めるのはアリだが、後ろから刺されないように気を付けよう。

感性に差がある時、人の善意は悪意に映る。
それはまさに、この映画そのものにも言えることだ。
あの地獄のようなオチは監督の「思い付き」らしいが、恐らくは「ファンを苦しめてやろう!」という悪意ではなく、善意からなるものだったのだろう。
結果として、チョコだと思って食べさせられていたものが実はウンコで、「でもチョコだと思って食べてた時は美味しく感じられてたでしょ?そんなもんだよ。自分を信じてそのまま食べ続けな!^^」と無邪気に言われるイジメを受けた気分になったが。

そんな自分とは対極的に、この映画を観て救われたと述べる人も観測した。
この映画と同じようなテーマを扱った上で、もっと上手くやっていて、高評価を得ている作品なら他にもある。
正直、この拙い脚本で救われたと言うなら、その他の上手い作品によってなら、もっと救われるのではと思ってしまう。
ならば過半数に精神的ダメージを与えるような、人を選ぶ作品よりも、そちらを勧めてあげる方が人道的だろう。
なるべく心からお願いする。

さて本作品に対する評価だが、タイトルの通り「チョコだと思って食ってたらウンコだったみたいな映画」だ。
「カレー味のウンコ」と「ウンコ味のカレー」という究極の選択における前者である。

最初から最後までクソな映画は笑える。上げて落とされることがないからだ。ウンコだと知りながらウンコを食う、これほど不愉快で愉快極まることはないだろう。だからC級映画は嫌いじゃない。

しかしこの映画は、オチまでは加点方式で80点だったのに、オチでマイナス9億点になったのだ。
オチを除けば本当に、褒めたい所は沢山ある。

ストーリーに関して述べれば、序盤の走馬灯めいたダイジェストは想定内ながら、パパス死亡RTAな所はちょっとどうかと思ったが、おかげさまで終始テンポは良く、飽きずに観ることができた。
所々のギャグには、どことなく鳥山明作品を思い出して微笑み、中盤では涙さえした。

多くの人にとっての関心事は、やはり花嫁の件だろう。
ビアンカかフローラか、はたまたデボラかルドマンか、といった論争はしばしば起きるものだが、そこの落とし所は上手かった。
結果的に自分は、フローラもビアンカもどちらも好きになってしまった。ちなみにデボラはいなかった。

その他については、改変が多々あったようだ。
しかし、ドラクエVを中盤までプレイしたものの、クリアした記憶がなく、流れを大まかに知っている程度であるニワカプレイヤーな自分は、さほど違和感を覚えなかった。

台詞回しについては、ドラクエらしさを感じない、現代的で違和感のある箇所がいくつかあり、何となく心地が悪かった。

オチの感想については最後に述べる。直接的なネタバレはしないが、察しのいい人なら何となく予想出来てしまうかもしれない。
とはいえネタバレされずに初日に行って受けた印象が「鬼がやる詐欺」なので、ネタバレを見てから行くかどうか決めた方がいいと思うが。

CGに関しては、出来栄えは素晴らしい。
人物キャラ(特に主役陣)はあまり鳥山明風でなく、特にビアンカなどはクロノクロスを彷彿とさせる雰囲気ではあるが、おしなべてみな可愛らしく、モンスター達は鳥山明風のままで、獣はフワフワ、ドラゴンは艶っぽく、機械はカッコいい。
優しい質感で、世界ごと愛でたくなる。

音楽に関しては、流石すぎやまこういち。ただ、その使い方に関しては、賛否両論のようだ。個人的には(やはりニワカであるからか)あまり気にならなかった。

俳優による声の演技に関しては、褒め称えるレベルではないが、批判するほどの酷さはなかった。ただ、重く迫力のある渋い声が欲しいキャラクターに対して、軽めの声が当てられているという印象は強く受けた。
パパスはもっとこう、大塚明夫みたいなイメージだったのだが。勇者ヨシヒコとはね。ヨシヒコは好きだけど。
ゲマが中尾隆聖でないことに違和感を覚えたのは、完全に自分がドラゴンボールの影響を受けているだけなので何も言うまい。しかしながら「光のお父さん」によるゲマは、これはこれで紳士なふりをした悪魔といった感じが出ていて良かった。

とまぁ、基本的には褒めたいと思う所しかなかったのだ。自分は、順当にこの映画のファンになろうとしていた。

しかし、事件は起きた。
ここからはオチの話だ。

「こんな展開あったら嫌だなw」と薄々思っていたことが実現してしまったのだ。

生放送で演説中の人が急にウンコ漏らしちゃったら空気ヤバいことになるなとか、
ヒーローショー中にヒーローが熱中症で倒れちゃったら怖いなとか、
舞台上で演者がセリフ忘れちゃったらどうしようとか、
今食ってるオムライスに実はゴキブリ入ってたらどうしようとか、
そういう「あり得なくはないけどまさか起きないよね」と想像しがちな「嫌なこと」が、現実となって立ち現れてしまったときの、異常な空気。
クライマックスに向けて盛り上がっていた気分が急降下し、血は音を立てて引き、肝が一気に冷えたのを感じた。
劇場の誰もが求めていない展開が繰り広げられる。
やめろ、もうやめてくれ!と脳内で叫ぶ俺の中のサトシ。
ここだけ親戚の中学生にでも書かせたのか?いやむしろそうであってくれ、いい歳した大人が書いたと思いたくない、とさえ思えるあまりに稚拙な展開。
このシーンのモデリングをしている時、3DCGクリエイターは一体どんな気持ちだったのだろう。想像するだけで胃潰瘍で入院出来そうだ。
そして迎えるエンディング。ショックのあまり、主人公が何を言っていたかすら覚えていない。
流れるスタッフロール。被害者リストと言い換えるべきかもしれない。
何一つ飲み込めず、首を傾げ続ける自分。この時点ではまだ怒りも悲しみもなく、ただ爆笑しそうだった。
そしてオチになって初めて登場したキャラクターが再び映し出された瞬間、「お前誰だよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」と劇場に轟く声で叫びそうになった。堪えられたのは奇跡だ。

公式ツイッターで「激エモキャンペーン」なるものをやっているが、「激怒エモーション」の略だろうか?

後に残ったのは、「金を払ってオタクであることを馬鹿にされに行った」という実感だけ。
いや、それだけならまだいい。腹が立つだけなら、まだ。
自分は呪われたのだ。

これから先、どんな映画を見ても自分は思い出すだろう。
「はい、ユアストーリーお待ち!」などと言いながら「監督一人のマイストーリー」を顔面に叩きつけられた屈辱を。
またしてもオチで「ユアストーリー」されるのではないかという恐怖を。

映画視聴後。
一時間以内にこの苦痛体験について誰かに話さなければ、呪いで死んでしまうような気がした。
ゲーマーの姉に電話をした所、「ファイナルファンタジーの映画もクソだった」などと慰められた。

24時間以上、ソシャゲさえプレイする気が起きなかったのは久々だった。
子供の頃からゲームが好きで、今はゲーム会社で働きつつ、家に帰ってはゲームをしている。
ゲームは、自分の生きる意味そのものだ。欠かす事などあり得ない。
なのに、ゲームをしようとするとアイツの顔がチラつく。アイツが俺の世界を壊しにくる。ゲームをしたい気持ちが一瞬にして萎える。
ゲーム原作の映画を観たら、その内容がつまらなくても面白くてもゲームをやりたくなるものだと思っていたが、次元が違った。
ゲームがどうとか、ドラクエがどうとか、そういう問題ではないのだ。
フィクション、エンタメ、創作物を楽しむ心そのものを踏み躙られたのだと、この時初めて気付いた。

仕方がないので小説版のマインクラフトを読んだ。こちらの方がよっぽどマイストーリーで面白かった。

数あるクソ映画とユアストーリーを比較して、どちらが酷いか決めようとする向きがあるが、大半のクソ映画に対して失礼なのでやめてあげて欲しい。

クソ映画は、単に制作側の予算や実力が足りなかったせいで結果としてクソになっているのであって、本人達はたぶん真面目にやっているはずだ。あるいは、イカれたサメやゾンビが出てくるようなB級映画はそもそもがウケ狙い。
単にクソ不味激ヤバ飯を食わされたというだけであって、アンラッキーだったとは思えど、死ぬほどではない。

対してユアストーリーは、美味な料理にひと匙の毒を混ぜたのだ。「人によっては毒かもしれないけど、人によっては身体に良いんですよ^^」と、無邪気な笑顔で。
倫理の一線を超えている。

毒は使い方によっては薬にもなるという。
言い換えれば、毒が薬になるかどうかは、扱う者の技量による。
だがそもそも、毒を入れる事を思いついたとしても、入れないという選択が出来たはずだ。
普通、良識ある人間は思い付きで料理に毒を入れない。
特に、他者が育てた食材を使った料理には。
食材の生産者に泥を塗る可能性を考慮するからだ。

今回の場合、その生産者がOKを出してしまったので、毒入り料理が世に出てしまったわけだが。
何故、どうしてOKを出した? 一体何を監修したというのか?
この点に関しては、スクエニに対しても怒りを覚える。

一人のくだらない思い付きを、誰も止められなかった。多くの人が関わっていたはずなのに、誰も。
絶対こんなのクソだと感じていた人間も制作側にいたはずなのに、声をあげられなかったか、聞き入れてもらえなかったか。
いずれにせよ、世に蔓延るそうした不健全な構造そのものに、ヘドが出るのである。

さて、いつまでも苦しんでいられない。
ユアストーリーという名の呪いを打ち破る呪文を、探し求める冒険に出るとしよう。
取り急ぎ今日は映画仮面ライダージオウを観るので、これにて。

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サイコショッカー