「構成に問題があると思います」ドラゴンクエスト ユア・ストーリー さなさんの映画レビュー(感想・評価)
構成に問題があると思います
わたしはコアなドラクエファンではないので、原作に忠実かどうか等の観点では語れないのですが、それ以前に映画の構成として欠陥があるように思いました。
特に印象に残った点は二つです。
・ラストシーン以降、感情移入できない
わたしはドラクエのファンというわけでもなく、原作のストーリーもよくわかっていないので、原作に忠実じゃないところにも気が付くことなく、例のラストシーンまでは普通に楽しめました。
が、あのラストシーン以降、今まで感情移入できていたキャラクターたちに全く感情移入できなくなるし、今まで積み上げてきた悲しさくやしさが、まったく解放されないまま映画が終わっていきます。
原作に忠実云々ということ以前に、単純に映画の構成として欠陥があるように思いました。「ユアストーリーだからありだよね」という話ではなく、ストーリーに構造的な不備があると思います。
(わたしは父さんの仇である黒幕をちゃんと倒したかった)
・「大人になれ」に対するフォローがない
表現が適切か分からないけど、子供のころから慣れ親しんだものって、自分にとっての故郷というか、自分を構成する一部というか、自分の核の部分だと思っていて、大人とか子供とか、ゲームから大切なものを学んだ(たしか映画の中で主人公が言っていた)とかいう次元のものじゃないと思っています。
「大人になれ」と言われて観客たちの中に生まれた負の感情に対して、映画の作り手側は、我々にとってのドラクエってこういう位置づけのもので、大人とか子供とかいう次元の話じゃないんだよ、ということを強く表現して、観客たちの負の感情を救う流れにしないと、映画の構成としてダメだと思うのですが、救う表現が弱い。
そのため、観た人は自分の核の部分を傷つけられたままになってしまったんではないかと思いました。
自分たちにとってドラクエをやることの意味、かけがえのなさを観客と共有するための演出だったんだろうけど、表現が拙すぎて、伝わらないどころか、ドラクエファンの方たちを傷つけてしまうという、新しい形の暴力を見た思いです。
また、数十分かけて積み上げてきたものを最後の最後のたった数分で台無しにできるんだというか、そんな少ない手数で今まで数十分面白かった映画を全て無に帰すことができるんだという、逆の感動がありました。