「「美と真実だけを追求し、他は忘れろ」」ビル・エヴァンス タイム・リメンバード ミカエルさんの映画レビュー(感想・評価)
「美と真実だけを追求し、他は忘れろ」
髭を蓄え、カラフルなスーツを着た、ヒッピー風のカジュアルな出で立ちのビル・エヴァンスの晩年の姿をこの映画で初めて知った。若かりし頃の銀行員のような七三分けで首だけ下を向いて鍵盤を見続けているビル・エヴァンスのイメージがあまりに強く、そのギャップに当惑した。
銀行員からヒッピーに変貌したのは、多くのジャズミュージシャンと同じように、薬、女、死の影が絶え間なく襲ってくる波乱に満ちた彼の人生ゆえだった。
40分置きに注射するほどの薬物中毒、浮気が原因で内縁の妻が自殺、その2ヶ月後に浮気相手と結婚、統合失調症になり自殺した最愛の兄、天才ゆえか、人間性は破綻したかようで、そこに悲劇が積み重なり、最後には自分自身も51歳で人生の幕を閉じる。
「美と真実だけを追求し、他は忘れろ」死の少し前にトニー・ベネットと交わした会話の中でビル・エヴァンスが発した言葉は、芸術家というのは作品がすべてであるという力強いメッセージとして記憶に刻んでおきたい。
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