「三文ノ映画」二ノ国 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
三文ノ映画
スタジオジブリが製作に参加したRPGゲーム『二ノ国』シリーズをアニメ映画化。
原作ゲームについては、存在すら知らなかったレベル。
監督はジブリに在籍していた百瀬義行、音楽はジブリ作品お馴染みの久石譲がゲーム版に引き続き担当。
ジブリエッセンスと人気ゲームならではの冒険ファンタジーで、面白かった。
あ・る・意・味…。
車椅子のユウ、成績優秀でバスケ部のエースのハル、ハルの恋人コトナは、幼馴染みの高校生。
ある日の学校の帰り道、コトナが不審な男に襲われる。
ナイフで刺され重傷を負ったコトナを助けようとした時、ユウとハルは…。
気付いたら、中世時代のような別世界へ。
そこは、現実世界“一ノ国”と並行するもう一つの世界、“ニノ国”であった…!
そこで、コトナそっくりのアーシャ姫と出会う。
呪いの魔法を掛けられたアーシャを、ユウが救う。
一旦現実世界に戻るとコトナには何事も無かったが、今度は別の悲運が襲う。
“一ノ国”と“ニノ国”で繋がっている者も多い。コトナとアーシャ然り。
それは、命だけではなく、性格や好きなものも。
コトナとアーシャ、両方を救いたいユウ。
コトナを救いたければアーシャを討て、と吹き込まれたハル。
友情と命の決断を迫られる…。
…と、大体の話をまとめてみたのだが、
話や設定自体は悪くない。
繋がっている二つの世界など、面白味もある。
友情、仄かな恋、成長など青春要素を絡めた、ド定番王道の冒険ファンタジー。
…悪くはないし、面白味もあるのに、何なんだろう、この面白さの無さは…??
これは決定的に題材を活かせなかった演出や脚本に問題アリ。
せっかくRPGゲームの映画化ながら、ワクワクやハラハラを感じない。
双方の世界を行き来出来る方法は命の危険に面したららしいが、何か唐突と言うか、説得力に欠ける。
他にも説明不足やイマイチや物足りなさがいっぱい。
“ニノ国”を襲う陰謀と黒幕。王様、勇ましい騎士団長と女隊長、そして魔法宰相…って、子供でも分かるわ!
その陰謀と黒幕を鮮やかに推理で明らかにするユウ。って言うか、国の高官たち、無能過ぎ…。
かと言って、主人公たちも魅力的とは言い難い。
ステレオタイプのようなキャラクター像。
両方救いたいユウと、好きな人を救いたい為に暴走するハル。
苦悩や葛藤、友情が深く熱く描かれているように見えて、ほとんどグッと迫るものがない。
特にハルの行動については理解し難い。
あたかも用意された台詞や行動通り、ゲームコントローラーでただ動かされているかのよう。
悪くはない点もあるにはあった。
画のクオリティーはさすが。
特に、飛行船で夜空を飛ぶシーン、呪いの魔法が消えたアーシャが森の中の湖で舞い踊るシーンは、美しくファンタスティック。
また、ラスト明かされるユウの正体はなかなか意外性を付いた。ここだけ、ユウとハルの友情にグッとさせられるものがあった。
後は…
う~ん、う~ん、う~ん…。
話題性で集められた人気若手俳優の声もビミョー。
子供でも分かる黒幕の動機は同情を買うが、ラストバトルはありきたりで、立ち向かうユウたちもご都合主義。
それから非常に残念だったのは、久石譲の音楽。いつもいつも魅了されるのに、何だか本作の音楽は魅力的に感じず、寧ろチープさを感じた。
薄っぺらい物語、薄っぺらい冒険、薄っぺらい戦い、薄っぺらい友情を見せられて。
“一”でも“ニ”でもない、“三文映画”であった。
ここまで来ると一周回って、ある意味、面白い。