「王道の感動」映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ ゆゆゆさんの映画レビュー(感想・評価)
王道の感動
彼女に誘われて見に行きました。見る前にレビューを軽く確認したところ「泣ける」と言った感想を多く見かけたのですが、「ストーリーよりもキャラクターの可愛さを引き出すことに重点が置かれた映画に見えるが、何とも浅い人間が多いことだ。泣いている自分に酔っているだけでは?」と、正直に言いますが馬鹿にしていました。
いざ物語が始まっても、序盤〜中盤はすみっコ達の愛らしい所作を只管鑑賞するだけ。ほっこりした気持ちにはなるものの強烈な感動を誘う要素は微塵もなく、大人にとっては少々退屈な時間でした。しかし、予想通りの展開とタカを括っていた私に、終盤にて感動の大波が襲い掛かりました。ネタバレを防ぐ為、詳細は省きますが兎に角すみっコ達がいじらしい。最後の最後までちょっぴり悲しいエンドなのか、それとも完全なハッピーエンドなのか何方の可能性もあり得る予想不可能な状況が続き気付けばどっぷりと感情移入、私の心は終始揺さぶられていました。思わず涙ぐんでしまったもののチンケな"大人のプライド"が隣で号泣する子供を前に叫泣を許しません。何とか踏み止まり物語はEPへ。やがて明かりがつき涙を流す彼女と共に退出、感動を共有しようとしたその時私の涙腺はまるでナイアガラの滝のように見事に決壊しました。私はこれまで映画作品で泣いたことがなかったので、これが初体験となります。あまりの感動に、長々と稚拙な語彙力を絞り出して駄文を綴らせていただきます。
素敵なキャラクターに癒されるだけでなくストーリー自体も深い感動を引き起こしてくれる、何か機会があれば見て損はない映画だと思いました。
さて、ここからはより具体的な感想を少し(ネタバレにならないように注意しますが不安な方は読むのをお控えください)。この映画からは一種の「神の在り方」を見出せるのではないでしょうか。
本の世界にとって、本の製作者サイドであるすみっコ達の世界は互換不可能の上位世界。本の世界は全て作者側の意思によって創造される。すなわち、本の住民達にとってすみっコ(を含む作者達)は"神"と言えるのです。この物語は神が下位世界に干渉、迷える子羊と苦楽を共にし、絆を深めた結果救済を図ったという言わば、「信仰が奇跡を起こした物語」と見ることができるのではないでしょうか。ある意味では神話の縮図であり、「もし神様がいるのならこんな感じなのかな」と神という超越的存在に対する理解を深めることができましょう。
こういった見方ができる程度には侮り難いストーリーとなっています。是非劇場に足を運び、この"奇跡"の物語を楽しんでみてください。長文失礼しました。