アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場のレビュー・感想・評価
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あっさりと命を奪い去る戦争の悲惨さ、そして銃撃戦だけでなく手榴弾を用い更に戦車も登場する迫力ある戦鬪シーン
組織には反抗的だが、歩兵として抜群に優秀なロッカ伍長を演じたエーロ・アホは随分と魅力的であった。銃撃戦だけでなく手榴弾を用い、更に戦車も登場する戦鬪シーンはなかなかの迫力。そしてホロバイネンやヴァタネンら主役があっさりと死んでしまい、戦争の悲惨さを感じた。
加えて、フィンランドがソ連に侵攻する継続戦争のことは全く知らなかったので、この映画で新ためてこの歴史的に興味深い戦争を知ることができたのは収穫。現在の状況もあり、この国の隣国への姿勢は大変に興味深いものがある。
アク・ロウヒミエス監督・脚本の2017年公開のノルウェー映画。原作はバイノ・リンナ「無名戦士」、脚本ヤリ・オラビ・ランタラ、撮影はミカ・オラスマー。
出演は、エーロ・アホ(ロッカ伍長)、ヨハンネス・ホロパイネン(小隊長)、アク・ヒルヴィニスミ(小隊員)、ジュシ・ヴァタネン。
少しばかり退屈な点と、理解力の乏しさのせいかもしれないが理解し難い点(兵士たちの女性教師宅への突然の訪問)はあった。
寒そうだった
戦闘描写が激しい。それ以上に寒そうで、手袋の指が開いていて見ているだけでかじかむ。フィンランドはドイツと同盟を組んでいたのだが、終戦前にソ連と組んでドイツと戦ったから敗戦国扱いにならなかったそうで、うまいことやったなあと思う。兵士の顔の見分けがつかなくてストレスだった。主人公は魅力的だった。
戦争は人を殺すのではない、敵を殺すのだ。
フィンランドが第二次大戦にどう関わっていたのか全然知らずに見ました。
先祖の土地を取り返し、家族との安寧な生活を取り戻すため銃を取って戦う兵士。
政治や上司のためではなく愛するもののために敵を殺す。
この心の葛藤がよくわかる秀作でした。
ハリウッドの派手な戦闘はありませんが、命がけの緊張感が良い役者によって丁寧に描かれています。
戦場の真実
第二次世界大戦が勃発した1939年。
ソ連の侵略により、国土の東側を失ったフィンランド。
このときのフィン・ソ戦は「冬戦争」と呼ばれている。
それから約1年半。
フィンランドはヨーロッパで勢力を強めていたドイツと手を組み、失った国土を取り戻すべく、ソ連への侵攻を開始する。
それは、ソ連との果てしない泥沼のような戦争の始まりだった・・・
といったところから始まる物語で、奪われた土地を取り戻して再び家族と農場を再建したいと願う熟練兵ロッカ(エーロ・アホ)や、結婚を控えたまま戦地に赴いた中隊長カリルオト(ヨハンネス・ホロパイネン)、戦場でも純粋な心を失わないヒエタネン(アク・ヒルヴィニエミ)など、タイトルどおり「名もなき戦士たち」の物語。
とにかく、戦闘である。
塹壕近くに落ちる爆撃弾や銃弾など、まさに戦場にいるかの如く緊迫感。
主要人物たちも、あっけなく(といっていいほど)次々と死んでいく。
戦勲をあげるような英雄は出てこない(いや、熟練兵ロッカだけは、幾度も死地を潜り抜けて生き延びるのだから、それだけでも英雄なのだが)。
と、リアルな戦場映画である。
最近、国会議員のひとりが「戦争で奪われた領土は戦争でしか取り返せない」云々という不謹慎な発言をしたが、そうなるとどれほど悲惨なことになるかは、この映画をみてほしい。
監督はフィンランド内戦にシリアスな恋愛を絡めた映画『4月の涙』を撮ったアク・ロウヒミエス。
今後も注目したい監督のひとりです。
紛ごうことなき戦争映画の傑作の一つ
戦争映画といっても、描くテーマによって様々なタイプに分かれる。
この映画は、祖国の為に戦う無名の兵士の最前線をリアルに描き、戦争の理不尽さと非人間性を捉えた、傑出した反戦映画であり、人間ドラマだ。
フィンランド映画史上最大の制作費、最高の興行収入、ワンシーンに使われた火薬量がギネス認定、公開後7週連続興行成績第1位、550万人の国民の5人に1人が映画館に足を運ぶという正に国民的映画[https://eiga.com/news/20190406/8/]
劇中の9割方は、敵の気配を感じながらの戦闘シーンで、一旦銃撃戦が始まると、優劣が決着するまでその場から逃げることはできない。
客席でも心音が高鳴り、目の前の光景から目を背けたくなる惨状。
つかの間の休戦時に広がるのは、美しく雄大な原林風景。
そして、残りの1割に挿入される、日常の生活。それが、地獄と対比される天国のように又美しい。
何気ない平和な日常が、極限の状況と対比されることで、毎日の生活がかけがえのない営みであることが強調され、説得力のある人間ドラマに仕立てられている。
上映後のトークタイムで、フィンランドの現状を聞くことができた。
今でも徴兵制と定年頃までの予備役があり、いつでも戦地に赴く準備がなされているという。
フィンランドに限らず、今日の平和が、先史以来の戦いの犠牲の上に築かれていることを思い知らされる。
英米仏独といった大国の狭間で翻弄され、露との流動的な国境は、森林を伐採しただけのベルト地帯。
宇宙船からみたら、陸地の繋がりにしか見えないその国境を巡って、戦いのない日はいつ訪れるのか。
戦争、平和、家族、子ども、故郷ということを、これほど身近に感じ、考えさせてくれる映画を他に知らない。
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