アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場のレビュー・感想・評価
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地味な戦い
1941~1944年「継続戦争」での、フィンランド4名の歩兵部隊の兵士を軸に描いた群像劇。
明確な主人公がいないため、誰の物語なのか分からないまま最後まで。
撤退時にソ連の戦車や爆撃機は出てきたものの、地味に歩兵同士の塹壕や蛸壺での打ち合いが1時間以上続くので、眠気と戦う羽目に。
私は我慢して最後まで眠らずに耐えたけど、すごいいびきがどこからか聞こえたwwww
セリフのはしばしに、今の価値観が入り込んでいる惑があるし、少ないとはいえフィンランド側にも戦車などの軍備もあったはずで(ソ連のを鹵獲して改造したBT-42や、ドイツから貸与されたIII号突撃砲など)、それらが一切出てこない不自然さもあったりと、映画としてはイマイチ。
しかしながら、「今のフィンランドがあるのは、過去に頑張った人たちのおかげ」みたいな、学校教材にはいいかも。
といいつつ、戦争映画の常なのか、けっこう濡れ場がありますが。
空気を切り裂く弾丸の音と、フィンランドの歩んだ道
この映画は、戦う目的を祖国に求めることが出来ず、家族や愛する人の元に戻りたいと切望しながら、もがき、仲間と助け合いながら必死で生き残ろうと戦った戦士たちの物語だ。
戦うシーンも、激しい戦闘というより、空気を切り裂くような、ヒュッヒュッという弾丸の音が印象的で、いつ身体が弾に貫かれるのか、弾に当たるなと願いながら、息を飲んでしまう。
フィンランド化。
この言葉を知っているだろうか。
もともとフィンランドが自国の土地をソ連に奪われ、第二次世界大戦に乗じて、奪還すべく戦いに挑み、一時は優勢だったものの、物資などに劣ったことから、結局、フィンランドは敗走することになった。
その後、ソ連の要求で同盟関係にあったドイツとも戦わされ、かなりの国土が焦土化したにも関わらず、戦後は枢軸の敗戦国として扱われ、戦後処理はソ連に多額の賠償金などで大幅に譲歩し、民主主義を維持しながらも、ソ連に逆らうことができないようになってしまった。
これを背景に、民主主義や資本主義を維持しても、共産主義の影響下に置かれることを表してフィンランド化と呼ぶようになったのだが、フィンランド自体は、それこそ「名も無き戦士たち」の激しい抵抗もあり、戦勝国に占領されることはなかった。
フィンランド化は、フィンランドを揶揄するように使われることもあったが、彼らは着実に産業育成に取り組み、世界的な通信企業で5Gも担うノキアや、精密機器のスントなどロシアよりも先進の先端企業を育てたに止まらず、高社会福祉国家を実現し、環境問題への取り組みも世界の先頭を走っている。
これも彼らの気質の賜物なのだろうか。
国家主義化せず、個人を尊重し、慎重に選択肢を絞り込み、積み上げてきたのだとしたら、何か羨ましく感じる。
ところで、ロシアということで考えると、北方領土の問題もあり、何か他人事とは思えない側面もある。
ロシアは帝政時代の南進から始まり、基本的には拡張主義を続けている。
東進の結果、日露戦争に至ったこともそうだ。
また、自国の周りの国々を共和国としてソ連邦に組み込んだり、東欧諸国を共産主義の衛星国にして西欧、アメリカに対峙、アフガニスタンに侵攻したことは、それほど昔のことでは無い。
ソ連崩壊で、拡張主義は終了したかに思えたが、プーチンの登場によって、クリミア併合、ウクライナ東部の反乱支援、シリア支援など拡張主義は復活してしまった。
個人的には、ロシアは、交渉するポーズは見せても、北方領土は返還しないと思う。
彼らは日本のせいだというが、相手の言うなりで、大きな進展を見せない現政権は、方針転換をすべきと思う。
広大な国土と、化石エネルギーによる収益に大きく依存するだけで、産業育成などは遅れ、軍事的緊張を煽ることが多いような国家に対しては、他にも対処する方法はあるのではないか。
人口減少が懸念されるなか、フィンランドのような国を手本として、やっていけるのではないかなど、余計なことまで考えさせられる作品だった。
歩兵の誇り
1940年のモスクワ講和条約でソ連領となったカレリアを奪還すべく1941~1944年にフィンランド軍が進行した継続戦争下のフィンランド軍機関銃中隊の話。
1939~1940年の冬戦争において本人は特に活躍した訳ではないとしながらも伍長に昇格した中年兵士ロッカの心情や行動を軸に中隊の動向をみせて行く。
戦闘シーンの激しさや緊迫感に早い段階から引き込まれるし、どこの国でもいつの時代でもみられる前線のことを見ないし考えないで言いたいことを言う上と、そこに噛み付くロッカとか、実際に行動する人間への信頼と絆とかちょっとカッコ良過ぎる。
勿論、上官の言うことを無視するのは危険だし許されないことで無謀なことは承知だけど、先陣を切って交戦し大活躍するロッカの言い分はある意味正論だし、強い男の生々しい言葉にも聞こえるし。
戦地だけでなく戦闘とは無縁な国内での様子との対比や、塹壕でのちょっとふざけたやり取りとかもなかなか。
「無名戦士」そう言われると前線を描いた作品は全て無名戦士が主人公なんだけどね。
男臭さや悲しさと迫力とが入り乱れる、前線を描いた昔ながらのオーソドックスな戦争映画という感じで非常に面白かった。
そして見終わってから頭の中にカリンカが何度も流れた。
念の為、戦争はそんな格好良いものじゃないとかいう正論コメントは不要です。
カ~リンカ カリンカ カリンカ マヤ♪
戦場の真実
第二次世界大戦が勃発した1939年。
ソ連の侵略により、国土の東側を失ったフィンランド。
このときのフィン・ソ戦は「冬戦争」と呼ばれている。
それから約1年半。
フィンランドはヨーロッパで勢力を強めていたドイツと手を組み、失った国土を取り戻すべく、ソ連への侵攻を開始する。
それは、ソ連との果てしない泥沼のような戦争の始まりだった・・・
といったところから始まる物語で、奪われた土地を取り戻して再び家族と農場を再建したいと願う熟練兵ロッカ(エーロ・アホ)や、結婚を控えたまま戦地に赴いた中隊長カリルオト(ヨハンネス・ホロパイネン)、戦場でも純粋な心を失わないヒエタネン(アク・ヒルヴィニエミ)など、タイトルどおり「名もなき戦士たち」の物語。
とにかく、戦闘である。
塹壕近くに落ちる爆撃弾や銃弾など、まさに戦場にいるかの如く緊迫感。
主要人物たちも、あっけなく(といっていいほど)次々と死んでいく。
戦勲をあげるような英雄は出てこない(いや、熟練兵ロッカだけは、幾度も死地を潜り抜けて生き延びるのだから、それだけでも英雄なのだが)。
と、リアルな戦場映画である。
最近、国会議員のひとりが「戦争で奪われた領土は戦争でしか取り返せない」云々という不謹慎な発言をしたが、そうなるとどれほど悲惨なことになるかは、この映画をみてほしい。
監督はフィンランド内戦にシリアスな恋愛を絡めた映画『4月の涙』を撮ったアク・ロウヒミエス。
今後も注目したい監督のひとりです。
日本人には知られていない戦争映画
1941年から1944年にかけて繰り広げられたフィンランドとソ連の継続戦争を題材にした日本人には知られていない戦争映画。
第二次世界大戦の裏にこのような出来事が有った事自体が勉強になりますが、現在のフィンランドの事を考えるのなら、何とも不思議に感じるお話ではあります。
結局、武力闘争では勝っても負けても何も生まれまいし、悲劇を作り上げるだけ・・・・
しかし、フィンランドとドイツが始めは組んでいたとは知らなかったな・・・・・・
勿論、フィンランドは当時のドイツのような酷い事や侵略目的では無かったので、組んでいても別の目的だったのですが・・・・
しかし、当時のソビエトにしても、現在のロシアにしても、結局あの国も戦争をしないと気が済まない国だし、汚い侵略をすることしか脳がない国なんだろうな・・・・
本編、休む事がない程、戦場のシーンが続きますが、何処の国でも結局、あの時の戦争で死んでいった人はまさに犬死ですね・・・・
可哀想だけど、見ていて辛くなります。
大変にヘビーな作品でしたが、私たちの知らないフィンランドの戦争のお話は、私たちに、これからも「戦争」を起こしてはならない、意味がない事をしっかり伝えてくれます。
しかし、何処の国も、ビジネスでも、駄目な指揮官、いい指揮官っているんですね。
地を這う虫のように勝利へと向かう歩兵たち
原作となった小説の映画化はこれで3度目との事だが、過去2作が未見な状態での感想として、とにかく「重い」。
戦火の合間の、兵士同士の和気藹々とした描写もあるにはあるが、それも明瞭なものでなく、どこか陰湿な雰囲気を漂わせている。
そんな歩兵たちが、地を這う虫のように、ひたすら国のために家族のために銃を取る。
それは決してバカな上司のためではない。
だからこそ、実際の戦争とはこういうものだったのかもしれないと思わせるだけの説得力がある。
乱暴な例えをすれば、ボンクラ要素を抜いた『フルメタル・ジャケット』だ。
ただ、エンタメ要素もカタルシスもほぼ皆無な上に、近年の戦争映画の中でも群を抜いて息苦しい展開が続くため、観終わってもドンヨリとした気分になるのも確か。
「見せる」という名目は分かるが、「魅せる」という点では少々辛いかも。
もっとも、そうした安易にエンタメを入れないあたりがヨーロッパ映画らしいとも言えるけど。
あと関係ないが、宣伝コピーで「火薬使用量がギネス記録認定!」とあるけど、映画の内容を鑑みると、このコピーはいささか的外れじゃないのか。
製作陣は、必ずしもそこに注目してほしいとは思っていないような気がする。
紛ごうことなき戦争映画の傑作の一つ
戦争映画といっても、描くテーマによって様々なタイプに分かれる。
この映画は、祖国の為に戦う無名の兵士の最前線をリアルに描き、戦争の理不尽さと非人間性を捉えた、傑出した反戦映画であり、人間ドラマだ。
フィンランド映画史上最大の制作費、最高の興行収入、ワンシーンに使われた火薬量がギネス認定、公開後7週連続興行成績第1位、550万人の国民の5人に1人が映画館に足を運ぶという正に国民的映画[https://eiga.com/news/20190406/8/]
劇中の9割方は、敵の気配を感じながらの戦闘シーンで、一旦銃撃戦が始まると、優劣が決着するまでその場から逃げることはできない。
客席でも心音が高鳴り、目の前の光景から目を背けたくなる惨状。
つかの間の休戦時に広がるのは、美しく雄大な原林風景。
そして、残りの1割に挿入される、日常の生活。それが、地獄と対比される天国のように又美しい。
何気ない平和な日常が、極限の状況と対比されることで、毎日の生活がかけがえのない営みであることが強調され、説得力のある人間ドラマに仕立てられている。
上映後のトークタイムで、フィンランドの現状を聞くことができた。
今でも徴兵制と定年頃までの予備役があり、いつでも戦地に赴く準備がなされているという。
フィンランドに限らず、今日の平和が、先史以来の戦いの犠牲の上に築かれていることを思い知らされる。
英米仏独といった大国の狭間で翻弄され、露との流動的な国境は、森林を伐採しただけのベルト地帯。
宇宙船からみたら、陸地の繋がりにしか見えないその国境を巡って、戦いのない日はいつ訪れるのか。
戦争、平和、家族、子ども、故郷ということを、これほど身近に感じ、考えさせてくれる映画を他に知らない。
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