劇場公開日 2019年6月22日

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「空気を切り裂く弾丸の音と、フィンランドの歩んだ道」アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場 ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5空気を切り裂く弾丸の音と、フィンランドの歩んだ道

2019年6月27日
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この映画は、戦う目的を祖国に求めることが出来ず、家族や愛する人の元に戻りたいと切望しながら、もがき、仲間と助け合いながら必死で生き残ろうと戦った戦士たちの物語だ。
戦うシーンも、激しい戦闘というより、空気を切り裂くような、ヒュッヒュッという弾丸の音が印象的で、いつ身体が弾に貫かれるのか、弾に当たるなと願いながら、息を飲んでしまう。

フィンランド化。
この言葉を知っているだろうか。
もともとフィンランドが自国の土地をソ連に奪われ、第二次世界大戦に乗じて、奪還すべく戦いに挑み、一時は優勢だったものの、物資などに劣ったことから、結局、フィンランドは敗走することになった。
その後、ソ連の要求で同盟関係にあったドイツとも戦わされ、かなりの国土が焦土化したにも関わらず、戦後は枢軸の敗戦国として扱われ、戦後処理はソ連に多額の賠償金などで大幅に譲歩し、民主主義を維持しながらも、ソ連に逆らうことができないようになってしまった。

これを背景に、民主主義や資本主義を維持しても、共産主義の影響下に置かれることを表してフィンランド化と呼ぶようになったのだが、フィンランド自体は、それこそ「名も無き戦士たち」の激しい抵抗もあり、戦勝国に占領されることはなかった。

フィンランド化は、フィンランドを揶揄するように使われることもあったが、彼らは着実に産業育成に取り組み、世界的な通信企業で5Gも担うノキアや、精密機器のスントなどロシアよりも先進の先端企業を育てたに止まらず、高社会福祉国家を実現し、環境問題への取り組みも世界の先頭を走っている。
これも彼らの気質の賜物なのだろうか。
国家主義化せず、個人を尊重し、慎重に選択肢を絞り込み、積み上げてきたのだとしたら、何か羨ましく感じる。

ところで、ロシアということで考えると、北方領土の問題もあり、何か他人事とは思えない側面もある。
ロシアは帝政時代の南進から始まり、基本的には拡張主義を続けている。
東進の結果、日露戦争に至ったこともそうだ。
また、自国の周りの国々を共和国としてソ連邦に組み込んだり、東欧諸国を共産主義の衛星国にして西欧、アメリカに対峙、アフガニスタンに侵攻したことは、それほど昔のことでは無い。
ソ連崩壊で、拡張主義は終了したかに思えたが、プーチンの登場によって、クリミア併合、ウクライナ東部の反乱支援、シリア支援など拡張主義は復活してしまった。

個人的には、ロシアは、交渉するポーズは見せても、北方領土は返還しないと思う。
彼らは日本のせいだというが、相手の言うなりで、大きな進展を見せない現政権は、方針転換をすべきと思う。
広大な国土と、化石エネルギーによる収益に大きく依存するだけで、産業育成などは遅れ、軍事的緊張を煽ることが多いような国家に対しては、他にも対処する方法はあるのではないか。

人口減少が懸念されるなか、フィンランドのような国を手本として、やっていけるのではないかなど、余計なことまで考えさせられる作品だった。

ワンコ