「紛ごうことなき戦争映画の傑作の一つ」アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場 森のエテコウさんの映画レビュー(感想・評価)
紛ごうことなき戦争映画の傑作の一つ
戦争映画といっても、描くテーマによって様々なタイプに分かれる。
この映画は、祖国の為に戦う無名の兵士の最前線をリアルに描き、戦争の理不尽さと非人間性を捉えた、傑出した反戦映画であり、人間ドラマだ。
フィンランド映画史上最大の制作費、最高の興行収入、ワンシーンに使われた火薬量がギネス認定、公開後7週連続興行成績第1位、550万人の国民の5人に1人が映画館に足を運ぶという正に国民的映画[https://eiga.com/news/20190406/8/]
劇中の9割方は、敵の気配を感じながらの戦闘シーンで、一旦銃撃戦が始まると、優劣が決着するまでその場から逃げることはできない。
客席でも心音が高鳴り、目の前の光景から目を背けたくなる惨状。
つかの間の休戦時に広がるのは、美しく雄大な原林風景。
そして、残りの1割に挿入される、日常の生活。それが、地獄と対比される天国のように又美しい。
何気ない平和な日常が、極限の状況と対比されることで、毎日の生活がかけがえのない営みであることが強調され、説得力のある人間ドラマに仕立てられている。
上映後のトークタイムで、フィンランドの現状を聞くことができた。
今でも徴兵制と定年頃までの予備役があり、いつでも戦地に赴く準備がなされているという。
フィンランドに限らず、今日の平和が、先史以来の戦いの犠牲の上に築かれていることを思い知らされる。
英米仏独といった大国の狭間で翻弄され、露との流動的な国境は、森林を伐採しただけのベルト地帯。
宇宙船からみたら、陸地の繋がりにしか見えないその国境を巡って、戦いのない日はいつ訪れるのか。
戦争、平和、家族、子ども、故郷ということを、これほど身近に感じ、考えさせてくれる映画を他に知らない。