「予告よりも深い話&爽やかなボーイミーツガール」サイダーのように言葉が湧き上がる 群青さんの映画レビュー(感想・評価)
予告よりも深い話&爽やかなボーイミーツガール
自分の見た予告ではごく普通のボーイミーツガールものという印象しか受けなかったのですが、粗筋にもあるとおりデイサービスに通う老人の話と段々と重なっていき、二つのボーイミーツガールとなります。
お年寄りの思い出話に弱い自分は全く予想していなかった展開に思わず涙が溢れてしまいました。
フライングドッグ10周年記念ということでレコードがフューチャーされており、登場人物の若い子たちが「これなに?」「初めて見た…」という反応や知らないが故のレコードの扱いの雑さもなかなかおもしろかったです。
思春期ゆえの自分の容姿へのコンプレックスの芽生えや大事なことを思い出したいのに思い出せない老人の哀しみ、少しずつ彼女への想いを自覚し言葉にしていく主人公など、セリフだけではなく仕草や表情で丁寧に描写されており感情移入してしまいました。
冒頭のスケボーシーンは現実に即して引いてしまう人もいそうですし、自分も一瞬眉を顰めてしまいましたが、追いかける人物の描写をギャグっぽくしてあったのであくまでフィクションのアクションシーンとして楽しめました。
「大きい音が苦手」で感覚過敏ぽい主人公(彼女と出会ってからは「必要なくなった」と言ってるので単に外界との遮断の言い訳だったかもしれませんが)や、父親がフィリピン人で日本語を話せるけど書けない、という少年などキャラクターの設定に近年の世相を反映しながらも重くなりすぎず、また説明セリフばかりにならず軽やかに表現されておりそういった点でも観賞後爽やかな気持ちになれました。