「ショッピングモールから物語が動き出す」サイダーのように言葉が湧き上がる teppeki77さんの映画レビュー(感想・評価)
ショッピングモールから物語が動き出す
ショッピングモールが多様性を奪うと批判されて久しい。
地方にそびえたつショッピングモール(イオン)は地域のコミュニティ(商店街)を破壊し、住民を画一的な価値観に押し込めるのだと。
本当にショッピングモールは地方の敵なのだろうか?資本主義に毒された現代の問題点の表象なのだろうか。
本作品はショッピングモールに肯定的な価値観を与えている。
ショッピングモールは老人の集まる場所であり、ファミリーが休日に買い物を楽しむ場所であり、病気を治す場所であり、若者の映える空間なのだ。そしてありとあらゆる人たちが絡み合うさまが、本作品でもいかんなく表現されている。つまりショッピングモールは現代の公共空間なのだ。
公共空間だからこそ本来出会うことのなかった人たちが交流しだす。
主人公とヒロインがそうだし、老人がそうだし、レコードとスマホがそうである。
ショッピングモールに集まる人たちの経済格差は激しいし、年齢差も大きい。
しかし同じ空間にいることで同じ人間、他者として尊重しうるし、想像力が働く。
周りが田んぼだらけのど真ん中にショッピングモール(資本主義)があることは不気味か?
僕は現代が作り出したほとんど唯一といっていい公共空間として、その姿がいとおしい。
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