「音と映像。映画の2大要素はどう相互に作用するのか」彼らは生きていた 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
音と映像。映画の2大要素はどう相互に作用するのか
個人的にモノクロだった映像や写真をカラーに復元するのが好きではない。モノクロにはモノクロの真実があると思うので。AIによって色を判定してカラーにする技術がもてはやされいるのだが、人間が目撃した真実をAIが判定するというのはどうなのか。しかし、本作のカラーの使い方は上手い。どこをモノクロで見せて、どこをカラーで見せるのか。そこに当時生きた人々の思いや熱量を乗せていた。音声にも注目しないといけない。読唇術のプロを起用して彼らが何を話していたのかを読み取りアフレコしており、さらに環境音なども追加している。臨場感は格段に向上している、だがそのまま全てそれを真実を思うべきでもないのだろう。我々は戦争を映像越しにしか体験したことがない。そんな我々にとって、クリアな音声とクリアなカラーによって蘇った映像は、「リアル」だと感じさせる。しかし、「リアル」とはなんだろうか。
この演出に説得力を与えるのは膨大な兵士の音声インタビューだ。これがないと本作の真実性を担保できなかったかもしれない。映像だけでは足りなかった、音だけでも足りなかっただろう。音と映像どちらが主でも従でもなく、対等な関係を保っている作品だったことが本作の成功要因ではないだろうか。
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