「執念と技術、笑顔と血が結晶した記録映像の傑作。」彼らは生きていた yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
執念と技術、笑顔と血が結晶した記録映像の傑作。
本作は間違いなく映画史上に残るドキュメンタリー映画の傑作です。本作を傑作たらしめているのは、ピーター・ジャクソン監督の執念、映像技術、そして画面に登場する一人ひとりです。
まだ映画という技術が登場して間もないにも関わらず、イギリス帝国博物館だけで2200時間にも及ぶ記録映像を保存しているという事実だけでも驚愕です。ジャクソン監督はそこから100時間ほどを取り上げて、映像の補修と補正、着色を文字通り一コマ単位で施しています。
モノクロ映像の着色自体はそれ程真新しい技術ではありませんが、本作が採用している技術水準は群を抜いています。さらに本来ばらつきのあった記録コマ数を現在の規格に適合するよう補完しているため、昔の映像を観た時に感じる動きの不自然さが全くありません。また当時は映像と音声を同時記録する技術がなかったのですが、映像に合った別の音声を被せee
、さらには唇の動きで発話内容を読み取り、声優に台詞にして録音しています。話し手の出身地と思われる場所の訛りまで再現しているため、本人がしゃべっているようにしか見えないほどです。
こうしてあたかも現代の記録映像のように蘇った映像が映し出しているのは、まだ幼さの残る兵士達の無邪気な笑顔、そして無数の残酷な死です。体臭や死臭すら漂ってきそうな映像を再現し、戦争という愚行を見せつけたジャクソン監督の執念には脱帽です。
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