「イギリス側の兵士から見た「西部戦線異状なし」」彼らは生きていた ミラーズさんの映画レビュー(感想・評価)
イギリス側の兵士から見た「西部戦線異状なし」
予告編を観て気になっていた、第一次大戦のドイツ対イギリスのフランスでの塹壕戦を描いたドキュメンタリー。
1915年から18年当時のモノクロサイレントの映像を修正着色して最新の映像に変換して当時の戦争帰還者のインタビューや談話を当てて構成されて映画。
戦争の発端には殆ど触れずに、当時のイギリスの若者達が、無邪気に志願して出兵して凄まじい戦場を経験して行く様が割と淡々と描かれる。
冒頭からは、スタンダードサイズ(昔のテレビと同じ正方形に近いもの)のモノクロだが、兵訓練が終わりフランスに出兵して最前線に到着すると、ゆっくり画面がカラーと横長になり、生々しさが加速してゆく。
そこからは、凄惨な戦場の様子の連発で、絶え間無い爆撃と塹壕での待機。
そして泥、汚水、ネズミやシラミの被害と不衛生な生活、突撃と後退の繰り返しにより仲間たちは減り、そして次々と無残な死体と凍傷や壊疽など負傷を見せつけられる。
悪夢と地獄が本当にある。
一進一退の戦いで、末端の兵士達には、次第に戦争の勝敗など、どうでも良くなり、名もない戦友や同じ境遇の捕虜のドイツ人達のつかの間の交流が唯一の慰みになる
そして停戦により国に帰ると次第にモノクロスタンダードに戻り、帰還兵達は、まるで地獄の戦場など存在しない様に振る舞う世間に戸惑う。
そこで映画は終わる。
復元着色されて映像は凄いが、本当の戦闘場面は、当時の時点で撮影出来なかった様子で、イラストや絵を使って処理されており、その部分だけは、推測による物語性が強い。
第一時大戦を描いた昔の名作映画で、「西部戦線異状なし」に描かれる内容に、とても酷似している内容だと思うが、あちらはドイツ人側が体験したフランス戦線の話だか、どちらも無邪気に志願した末端の兵士達に降りかかった戦場の地獄と祖国に、帰還してからの世間との剥離感が同じで、ここまで似てるとは。