「重いテーマなのに静かなヒューマンドラマ」閉鎖病棟 それぞれの朝 mittyさんの映画レビュー(感想・評価)
重いテーマなのに静かなヒューマンドラマ
精神病院で生きる人々がそれぞれの事情を抱えているのですが、ある意味、人間味あふれる群像劇になっています。序盤にショッキングなシーンがあるのですが、その割には物語は静かに進んでいきます。重くて暗い内容なのに、様々なシーンで心が揺さぶられたり、ホッとあたたかい気持ちにもなりました。
ただ、多少、リアリティに欠けるところがありました。映画の舞台である「閉鎖病棟」。
自分は閉鎖病棟、開放病棟とも、実際に見たことがあるのですが、あまりにも開放的な閉鎖病棟に少しびっくりしました。完全な外界ではなく、中庭のような場所かもしれませんが、患者さんが自由に出たり入ったりはできないはず。外出許可もすぐに取れるし、チュウさんが退院できるほど回復しているのなら、開放病棟では?と思ってしまったり。病棟内に売店があるのにも・・・?
重宗(渋川清彦)のような暴力を振るう可能性のある患者を野放しにしすぎだし、実際に殺人事件が起これば、病院の過失になるはず。
しかし、あまり細かいところは気にせずに、独特のムードに包まれながら、作品の良さを楽しむ映画なのかもしれません。あまり説明もなく、ラストを迎えますが、あれはあれでよかったかもしれません。
主役の鶴甁さんをはじめ、俳優さんたちは、みんなよかったですねえ。特に小松菜奈ちゃん。以前見た、バイオレンス映画『ディストラクション・ベイビーズ』で、ヤバイ感じが印象的でしたが、今回も好演。見るからに怖い重宗(渋川清彦)、背筋がゾッとする由紀の継父(山中崇)も、ムカつくけど、よかったです。心優しいチュウさん(綾野剛)は主人公を慕う親しみのある存在。ある意味、病棟内のムードメーカーで心が和みました。
恥ずかしい余談ですが、『仮面病棟』と間違えて見てしまったのです。^_^; 本作の存在も気になっていたのですが、重苦しそうなので、ちょっと敬遠気味でした。でも見てよかった!!