「医学でも、法律でも、社会規範でもなく、人のあったかい感情なのだ。」閉鎖病棟 それぞれの朝 にっしんさんの映画レビュー(感想・評価)
医学でも、法律でも、社会規範でもなく、人のあったかい感情なのだ。
多数の人と同じ倫理や道徳を持てない人は、「心のおかしな人」とされ、社会と隔離される。その理不尽さは、理解のない家族によって生み出されることが多い。その悲劇を近代から多くの文学や映画が描いている。平山監督は、それをもっとストレートにわかりやすい材料で表現してくれた。
「心の病」とされる人の描写には賛否があるかもしれないが、平山監督が描きたかったことはそこじゃない。最後のシーンにいろんな思いが詰まっていると思った。「秀丸さん」の「生きていてもしょうがない。わしなんか生かしたら、税金の無駄や」の本心の思いから、「難儀でも生きていこう」と立ち上がる気持ちの変化は、あまりにも切なくて、泣けてきた。そして、もう生きていてもしょうがないと思う心を、生きてみようと思わせるものは、人の優しさしかないのだ。そうさせるものは結局、医学でも、法律でも、社会規範でもなく、人のあったかい感情なのだ。そう感じた。原作は確かに山本周五郎賞がよく似合う。
帚木蓬生の小説「閉鎖病棟」を読みたくなった。
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