システム・クラッシャーのレビュー・感想・評価
全36件中、21~36件目を表示
救いがない、が。
ベニーに現実で相対すれば、確実に無理って思う。手に負えないし、私に救える(と言ってしまうのはおこがましいが)わけでもなし。
でも9歳から10歳の子どもを切り捨てるわけにもいかない。ほんでベニーの母親よ、あれはあかん。その場しのぎで軽口を叩き、結局逃げる。
母親の家にいた男は、父親ではなく彼氏的なやつよね?弟妹の父親は誰なんかな。
計画的に子を成したとも思えない母親だしなぁ…
母親だけが悪いわけでもないだろうし、ベニーにオムツを押し付けたという父親がどこにいるんだかだし。
数多の施設に断られ、里親も見つからず、治療には住環境整わないととか、一時預かり施設に愛着湧かせたらあかんとか…親身になって愛着を持たれるとミヒャみたく自宅に来られちゃう。
ベニーにとっても支える人にとっても、どうすりゃいいのかわからんよね。
これどうまとめるのかなぁと思ってたら、ケニアの教育か矯正施設に行くことになったけど、搭乗前の手続きの途中で逃げ出すところで終わった。え?そのまま?救いがねぇよと思うが、ここで何らかの希望を見せられても嘘くさい気もするし。
このまま長靴下のピッピよろしく自由に暮せるといいけど、火宅はそうもいかまい。
ベニーの生命力を、ニーナ・シモンのAin’t Got No, I Got Lifeが象徴するエンドロールは、すばらしい。その生命力で生きていけたらいいが…
何ができるのか、できないのか
ディプリパン225mg
期待度◎鑑賞後の満足度◎ 傑作だ。ベニーの目からは世界がどのように見えているのだろうとばかり気になった。ラストクレジットの歌はニーナ・ジモン作では?と思ったら当たりでした。
①まるでドキュメンタリーを見せられているような主演の女の子の演技が素晴らしい。
②「周りの人の善意と努力で良くなりました」「誰々とは心が通うようになりました」「社会に適応できるような良い子になりました」とかいったあまっちょろいヒューマンドラマにしなかったのか良かった。
③2019年製作の映画でベルリン(映画祭)で銀熊賞まで獲ったのに、日本では今年まで公開されなかったのは客が入りそうになかったからでしょうね。
確かに主人公の少女は共感を呼ぶようなキャラクターではないし(日本の様に同調圧力の強い社会では逆に言えば反感を招きそう)
④確かにベニーの様な子供が自分の家族ならもちろん自分の生活圏の中にいたとしたら、率直に言って何処かに閉じ込めておきたくなるだろう。
私の弟も統合失調症を患っていて一番酷かった時は突然殴られたり蹴られたり頭から水を掛けられたりしたので、ホント「死んでくれたら良いのに」と思ったし、精神病院に入った時は正直者ホッとした。
だから、母親のベニーに対する恐怖感も私にはよく分かる。
⑤でも本人は好きでやっている訳ではないのはわかっていたし、それはベニーも同じ。
どうしようもないのだ。
10歳の女の子にアンガーコントロールをしろなんて無理だし(大人でも難しいのに)。
しかし、秩序ある社会(システム)にどっては迷惑な存在であるのは間違いない。すぐ暴力を振るうのであれば尚更。
ソーシャルワーカーの人達や医師はみんな善意の人ばかりだし、みんな何とかベニーを社会に適応させようと努力する(言い方は悪いが調教しようとする)。
それは今後秩序ある社会の中で生きていくのなら、本人の為でもあるし社会のためでもある。
でも、調教出来ない動物がいるように、長期出来ない人間がいるかもしれない。
では、そういう人間にはどう対応したら良いのか?
システムにおけるバグのように除去する?
閉鎖病棟や精神病院に閉じ込める?隔離する?(昔なら座敷牢?)
本作も最後は欧州から隔離し南米という遠隔地に閉じ込める方法を選ばざるを得なくなる。
でも、その前にベニーは逃げ出す。走って走って飛び上がる、とベニーを閉じ込めようとする世界にヒビが入る(クラッシュする)…
⑥勿論、現実社会ではこんなことは起こらない。少女は拘束されてでも連れていかれるだろう。
人間は社会的生き物だとよく言われる。
私たちも社会の中で居場所を貰い、社会も私たちにその中で生きていく為の無言のルールを強いてくる。
たった一人で社会(誰か)のお世話にならずに生きていく能力も自信も勇気もないから、私たちは自ずと社会から弾き出されないように、弾き出されないまでも鼻つまみものにならないように、有る時は自分を殺し、自分を抑え、迎合し、生きている。
ベニーのように自分の思うまま、感じるままに振る舞い怒りわめき散らせたら、と思っても勿論、その後の事を考えると恐くて出来ない。
逆に、そういう人たちを見ると社会の秩序を乱すものとして眉をひそめ、酷い場合には排除しても仕方ないと思う。
飼い慣らされて生きていくか、飼い慣らされずに生きていくか…
まあ、そんなに深刻に考えることもないが、
答えは簡単には出ない。と言うか、答えは無いのだろう。
ただ、人間が社会的生き物であるのであれば、その社会に適応・適合するのが難しい或いはできない人間も引っ括めて私たちの生きる「社会」と見なすべきであろう。
この映画はその課題を我々に突き付けてくる。
システムには余白が必要だが、それを認めるとシステムでは無くなるというジレンマが存在する
2024.5.9 字幕 アップリンク京都
2019年のドイツ映画(125分、G)
攻撃的で手に負えない9歳の少女に振り回される大人たちを描いた社会派問題提起映画
監督&脚本はノラ・フィングシャイト
原題は『Systemsprenger』、英題は『System Crasher』で「攻撃的で乱暴なこども」を表す業界の隠語
物語の舞台はドイツのベルリン
幼少期にオムツを顔に押し当てられたベニー(ヘレナ・ゼンゲル)は、顔をさわられるとパニックになり、暴力的になって手に負えなくなる少女だった
母のビアンカ(リザ・ハーグマイスター)は愛情はあるものの、どう接して良いかわからずに福祉を頼っている
支援活動家のバファネ(ガブリエラ・マリア・シュマイデ)はベニーが安心して過ごせる施設を探すものの、どこでも問題を起こして追い出されてしまう
そこでバファネは、ボクシングジムでアンガーマネージメントを教えているミヒャ(アルブレヒト・シュッツ)に通行付添人を頼むことになり、何とか人並みに登校できないかと策を練ることになった
映画は、あるドキュメンタリーの撮影にて「システム・クラッシャー」なる言葉を知った監督が興味を持ち、その実態を描く作品になっている
また、ベニーの演技は多くの地域で高い評価を得ていて、演技なのかガチなのかわからないシーンも多く存在する
子ども同士の殴り合いの喧嘩などは本気で止めなければならないくらいで、ヤバいんじゃないの?というシーンが結構多い
ミヒャは「ベニーが問題を起こすたびに居場所がなくなること」を知っているのだが、ベニーはわかっていてもそれを制御できない
あらゆる検査をするものの、彼女に処方されるのは抗精神薬のリスパダールぐらいで、根本的な治療は行われていない
閉鎖病棟への入院も視野に入れているが、適応が13歳以上となっていて、ベニーに特例措置が出ることはないのである
システム・クラッシャーはベニーのことを指すのだが、映画を見ていると、システムを破壊するのは大人側のようにも思えてくる
特に母親の言動は最低の部類で、擁護のしようがないものがとても多い
一緒に住むと約束をして、翌日には反故にするし、別れを言わず、説明もせずに投げてしまう
全てを押し付けられるバファネが泣きたくなるのは、ベニーを想ってのものであり、未成年と親権という問題で過剰に守られている現状によって踏み込めないもどかしさというものもあるのだと感じた
いずれにせよ、かなり重たい内容で、ドキュメンタリーレベルの「演技」が展開される
ミヒャが距離を取れなくなるとか、それによって夫婦の関係がおかしくなるとか、関わるだけで目に見えない影響が多いのもリアルだった
このような問題は年々増えていく傾向にあって、このような行き場のない子どもを国としてどうするのかが問われている
最終的に諸外国へと投げる格好になっていて、「これで良いのか?ドイツ」というのが本作の真のメッセージなのだろう
聞こえの良い言葉で濁せても、所詮は国内ではどうにもできないと言っているのも同じなので、今後に向けての布石ができるのなら良い影響になったということになる
だが、本質的に解決は難しく、そこには未成年の親権問題が関わってくるので、ここまで放棄が進むのなら、親権剥奪まで話が進み、法的に解決できるようにならないと難しいように思えた
システムとは何を示すのか?
癇癪持ち。
医療関係者ではないので、はっきりはわからないけど癇癪持ち、ASD、、という事かな。
システムクラッシャーの主人公と周りで頑張るケアラー達の攻防、見ててかなり辛く抱きしめたくなる、そういう映画です。
演技という事を忘れて見入ってしまった。
担当者、施設、受け入れ家庭、ドライバー、ドイツのケアシステムがきちんと分業されていて、1人に負荷をかけない様にして継続的にケアする、手厚くて素晴らしい。(まあ、それでも持て余されてる主人公ではある)日本はどうなってるんだろう?ドライバーがアンガーコントロールしてるシーンで、彼女もいつか自分をコントロール出来る日が来るのだろうか?と思う。
バカ親の行動で無力感に苛まれるケアラー達も抱きしめたい。
主人公がまだ子供だから緩いが、大人になって行くと拘束や罰則がどんどんキツくなるというくだりが彼女の行く末を暗示していて悲しい。
どっぷり疲れた
扱ってる素材がムズいですねー
シンプルな構図と展開、時々差し込まれるイメージショットには混乱させられますがまぁそれが狙いの演出なんだと理解できましたし、分かりやすいストーリーだったので、自分はぐっと来ました。
とはいえ、扱っている事柄はかなり難しいと感じたので、面白いとか楽しいといった感情にはとてもなれません。むしろ深いに感じるところが多々あるし、嫌悪感を持つ人も多いかと─。
内容がムズいだけに、敢えてシンプルかつ分かりやすく作成されているような印象で、特に音楽なんかにそういった要素はふんだんに感じたので、捉えようによっては酷い内容なのかも─。最後のニーナ・シモンは最高なんですけどね。
個人的には演者の頑張りなんかも汲み取って、いいね!ってな感じです。
フラッシュバック
システム・クラッシャー 所々ドキュメンタリー作品を見てる様な感覚に...
システム・クラッシャー
所々ドキュメンタリー作品を見てる様な感覚に陥る。主人公のベニー役の子の演技がとてつもなく凄い。自然と惹き込まれる。
とにかくベニーに幸せになってほしい、ベニーの望み通りになって欲しいと願って観ているもどうしてもうまく行かない。決して救われる可能性がゼロなわけではない。
時折見せる優しさ、幸せそうな笑顔が彼女を救おうと気持ちを奮い立たせてくれるもどうしてもうまくいかないことに繰り返し。
最後のミヒャ同様こちらも心が折れかけるも、周りの大人が絶対に心折れてはいけない事だけは終始作品から伝わる。
明確な解決法はこの作品では描かれていなかったがこれが現実なのだろう。
登場人物達と同様不安や恐怖、葛藤などを味わう事のできる作品であった。
個人的な2024年洋画新作鑑賞ランキング
1 ネクスト・ゴール・ウィンズ 4.8
2 Firebird ファイアバード 4.8
3 コット、はじまりの夏 4.7
4 アイアンクロー 4.7
5 オッペンハイマー 4.7
6 クレオの夏休み(横浜フランス映画祭2024) 4.7
7 コンセント 同意(横浜フランス映画祭2024) 4.7
8 ARGYLLE/アーガイル 4.7
9 アリバイ・ドット・コム2 ウェディング・ミッション4.5
10 バティモン5 望まれざる者(横浜フランス映画祭2024) 4.5
11 システム・クラッシャー 4.5
12 デューン 砂の惑星 PART2 4.5
13 愛する時(横浜フランス映画祭2024) 4.5
14 ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ 4.5
15 アクアマン/失われた王国 4.5
16 ニューヨーク・オールド・アパートメント4.3
17 マリア 怒りの娘 4.0
18 異人たち 3.7
19 ミツバチと私 3.6
20 ブリックレイヤー 3.5
21 ネネスーパースター(原題) Neneh Superstar (横浜フランス映画祭2024) 3.4
22 オーメン:ザ・ファースト 3.4
23 RHEINGOLD ラインゴールド 3.3
24 12日の殺人 3.3
25 インフィニティ・プール 3.3
26 ゴーストバスターズ フローズン・サマー 3.2
27 プリシラ 3.2
28 コール・ジェーン -女性たちの秘密の電話- 3.2
29 コヴェナント/約束の救出 3.0
30 僕らの世界が交わるまで3.0
31 ゴジラ×コング 新たなる帝国 3.0
32 ブルックリンでオペラを 3.0
33 ストリートダンサー 3.0
34 カラーパープル 2.9
35 弟は僕のヒーロー 2.8
36 RED SHOES レッド・シューズ 2.8
37 画家ボナール ピエールとマルト(横浜フランス映画祭2024) 2.7
38 Vermines(横浜フランス映画祭2024) 2.6
39 関心領域 2.6
40 ジャンプ、ダーリン 2.5
41 エクスペンダブルズ ニューブラッド 2.3
42 けもの(仮題)La Bête(横浜フランス映画祭2024) 2.3
43 マダム・ウェブ 2.3
44 落下の解剖学 2.3
45 ダム・マネー ウォール街を狙え! 2.3
46 哀れなるものたち 2.3
47 エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命 2.3
48 ザ・エクスチェンジ 2.2
49 DOGMAN ドッグマン 2.2
50 パスト ライブス/再会 2.2
51 リトル・エッラ 2.2
52 パリ・ブレスト 夢をかなえたスイーツ 2.2
53 ボーはおそれている 2.2
54 ジャンヌ・デュ・バリー 国王最期の愛人 2.2
55 瞳をとじて 2.2
56 ゴースト・トロピック 2.2
57 葬送のカーネーション 2.2
58 Here ヒア 2.1
59 美しき仕事 4Kレストア版(横浜フランス映画祭2024) 2.0
60 ハンテッド 狩られる夜 2.0
61 サウンド・オブ・サイレンス 2.0
62 ゴッドランド GODLAND 2.0
63 キラー・ナマケモノ 1.9
64 ザ・タワー 1.9
65 ポーカー・フェイス/裏切りのカード 1.9
66 マンティコア 怪物 1.9
67 アバウト・ライフ 幸せの選択肢 1.8
68 サン・セバスチャンへ、ようこそ 1.8
69 デストラップ 狼狩り 1.6
70 No.10 1.5
71 VESPER/ヴェスパー 1.5
72 フィスト・オブ・ザ・コンドル 0.5
番外
ソウルフル・ワールド 5.0
QUEEN ROCK MONTREAL 5.0
あの夏のルカ 5.0
私ときどきレッサーパンダ 5.0
FLY! フライ! 5.0
犯罪都市 NO WAY OUT 4.5
DUNE デューン 砂の惑星 リバイバル 4.0
メメント リバイバル 2.0
π〈パイ〉 デジタルリマスター 2.0
貴公子 1.5
ピアノ・レッスン 4Kデジタルリマスター版 1.5
辛すぎる『大人は判ってくれない』
『WANDA/ワンダ』、『私、オルガ・ヘプナロヴァー』などなど、一筋縄ではいかない芯が通った映画を配給するクレプスキュールフィルムがまたやってくれた。
父親に虐待を受けてしまったために情緒不安定となってしまった9歳の少女ベニー。グループホームや特別支援学級など行く先々でトラブルを起こす彼女は、母親と一緒に暮らしたいと願うも、当の母親は…
全編とにかく救いがない。母親も、親子をケアしようとする者達の立場も分かるゆえに、無下に非難できない。非暴力トレーナーのミヒャとの生活により心が開きかけるも、それも持続が難しいベニー。彼女は決して優しい気持ちを持てないわけではない、だからこそ余計辛い。ラストの解釈は観る人によってまちまちだろうけど、『大人は判ってくれない』とダブったのは自分だけだろうか。チャニング・テイタム主演でハリウッドリメイクが決定しているとの事だが、はてどうなるか。
とにかくベニー役のヘレナ・ゼンゲルの演技がすさまじい。ハリウッドデビュー作『この茫漠たる荒野で』では言葉が通じないながらも、トム・ハンクス扮する主人公と次第に心を通わせていく少女を演じていたが、スタッフは間違いなく本作を観てキャスティングしたはず。末恐ろしい女優がまた登場した。
全36件中、21~36件目を表示