劇場公開日 2024年4月27日

  • 予告編を見る

「【”ママ、ママ、ママ!と金切り声で母を求める可愛い少女の怒りと哀しみ。”今作はADHDの少女と彼女を支える寛容な人達を描いた作品であり、ADHDの子供に対する一つの接し方を描いた作品でもある。】」システム・クラッシャー NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 【”ママ、ママ、ママ!と金切り声で母を求める可愛い少女の怒りと哀しみ。”今作はADHDの少女と彼女を支える寛容な人達を描いた作品であり、ADHDの子供に対する一つの接し方を描いた作品でもある。】

2025年12月10日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

幸せ

■少女ベニーは、いつでも何かに怒っている。そして、一度その怒りに火が付くと、制御不能になってしまうのである。

 学校にも行きたくない。施設にも居場所が無い。

 だが、そんな彼女に施設福祉課のバファネ(ガブリエラ・マリア・シュマイデ)は優しく寄り添い、彼女の行く末を心配し、通学付添人のミヒャ(アルブレヒト・シュッフ)は、叱るべき時には厳しく叱り、時には自分から申し出て、ベニーと二人で電気も水道も無い自然の中の小屋で三週間過ごすのである。

 バファネもミヒャも物凄く忍耐強く、彼女に寄り添うのである。
ミヒャの妻エリも、幼いアーロンが居るのに、突然訪れたベニーを自宅に一晩受け入れるのである。ナカナカ出来る事ではないよ・・。

 今作ではベニーが求める母は余り登場しない。テロップでベニーが父に幼い時に、おむつを顔に付けられた事で、彼女が誰にも顔を触らせない事が、観る側に伝えられるが、そのシーンは描かれない。

 今作は、ADHDを抱える子供に対する一つの接し方を描いた作品である。

 ADHDの娘との同居を拒む母の想いも描かれる。分かる気がする。毎日、あのトーンで暴れられたら、彼女が懸念するように小さな弟への影響も出るであろうから・・。

 ADHDは詳細は解明されていないが、脳神経の異常が齎す異常行動である。それゆえに接し方は難しいであろう。だが、今作ではその一つの方法が示されていると思う。

■今作から読み取れるのは、そういう子供を隔離しない。孤独にさせない。何かを無理強いさせない。決めつけない。意見を尊重するという事であろうか。
 ラストショットでの、里親に出されたベニーが飛行機に乗る際のゲートから脱出し、空港内の通路を凄いスピードで走り、宙に両手を広げて飛翔するシーンが、実に印象的な作品である。

NOBU
PR U-NEXTで本編を観る