「少年とケアラーが築く関係性のドラマに引き込まれる」システム・クラッシャー 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
少年とケアラーが築く関係性のドラマに引き込まれる
子供をめぐる状況に真摯に向き合った良作である。思い通りにならないと感情の歯止めが効かず周囲に牙を剥き暴走してしまう一人の少年がいる。その思いを十分に受け止めきれない母親がいる。そして彼の精神状態をどうにか良い方向へ導こうと懸命にサポートするケアラーがいる。本作は決して安易なハッピーエンドで問題をうやむやにしようとせず、少年と父子にも似た関係性を築く男性ケアラーの視点を介して「この子に何をしてあげられるのか」の試行錯誤や現実に私たちの意識をしっかりと参加させていく。そこで両者の心が通じあって心が安らぐ瞬間もあれば、逆にすべての努力が無に帰したかに思える瞬間もあって、さらにケアラーにはケアラーの守るべき生活があるわけで、その線引きも大切なのだということを痛切に突きつけられた気がする。希望や絶望ではない。これだけの選択肢とサポート体制があることに興味が湧いた。日本の現状についても知りたくなった。
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