劇場公開日 2020年8月14日

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「現代にも通じるテーマ。見るべき映画です」赤い闇 スターリンの冷たい大地で ピンクマティーニさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0現代にも通じるテーマ。見るべき映画です

2020年8月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

重たい内容であまり気乗りがしなかったのだけど、なんだかこの映画は見なければいけないような気がして覚悟して鑑賞しました。
ガレス・ジョーンズという実在のジャーナリストのことは今の今まで知らなかったし、このような史実も知らなかったし、彼の死後100年近く経ってこのように映画化され、そのテーマが古びていないことに驚きます。
スターリンのことは教科書で習ったぐらいで、政治犯(犯罪者じゃないのだけど)を「粛清」した恐ろしい人物という知識しかありませんでした。そのスターリン政権の下、ソ連の「穀倉地帯」と呼ばれる肥沃な土地のウクライナ地方の人たちは(当時ウクライナは独立国家ではなくソ連の一地方だった)、収穫した小麦が自分たちの食卓には上らず、すべてモスクワに持っていかれ飢えと寒さに苦しみ何百万人と死んでいったのだそうです。たった一つのみかんに目の色を変える農民たち、食べ物がなく樹皮や到底口には出せないものを食べて飢えをしのいでいたのです。
ジャーナリスト魂の塊といった主人公が命をかけて真実を伝え続け、しかし彼のミッションともいえるジャーナリズムの仕事を生涯をかけて全うできなかったこと、今、彼がこの映画の上映を知ったら喜んでくれたでしょうか。
カラー映画のはずなのに、広大なウクライナの麦畑と一面の銀世界、まるで白黒映画のようなそぎ落とされた映像がスタイリッシュでした。メガホンと撮ったのがポーランド出身の女性監督だそうで、最近の女性監督の活躍には目を見張るばかりです。
これは決して過去の話ではありません。今も繰り返される私たちに突き付けられた現代のテーマでもあります。絶対に観るべき映画です。

ピンクマティーニ