ニューヨーク 親切なロシア料理店 : 特集
新サービス「シネマ映画.com」は、オンライン上の映画館
映画.comのスタッフがセレクトした世界の名作映画を
3つのスクリーンで配信いたします
2020年10月から8回にわたって実施した「オンライン上映会」は、大変ご好評いただきました。スタッフ一同感謝感激です。そして今月からは、私たちが集めた名作群を、オンラインでいつでもご覧いただける「シネマ映画.com」がサービスインです。スクリーンは3種類「プレミアムスクリーン」1100円〜1500円、「スクリーン1」550円〜770円、「スクリーン2」が330円〜550円です。ここでは、現在プレミアムスクリーンで配信している作品の中から「ニューヨーク 親切なロシア料理店」をご紹介いたします。(構成・文/映画.com編集長 駒井尚文)
本作は、私も劇場公開時に見逃した1本です。今回、シネマ映画.comで鑑賞できて大変嬉しかったし、皆さんに本編を直接お届けできるのは、さらに嬉しい出来事です。
「ニューヨーク 親切なロシア料理店」という邦題は、とても想像力をかき立てるタイトルですよね。ニューヨークに評判のロシア料理レストランがあって、夜な夜な色んな客が訪れる。その舞台裏では、凄腕のシェフとスタッフが忙しく働いていて……。そんな想像を誰もがするでしょう。しかし、全然違うんです。映画の原題は「The Kindness of Strangers」で、ニューヨークもロシアも含まれていない。「親切(Kindness)」だけが共通です。
2人の少年とその母が主人公。加えて、看護師、弁護士、レストランコンサルタント、すぐ仕事をクビになる男などが登場人物です。アンサンブルキャストによる群像劇ですね。私は、ロバート・アルトマン監督とか、ポール・トーマス・アンダーソン監督(PTA)の映画を思い出しながら見ていました。
とても興味深かったのは、この映画はニューヨークではほとんど撮影が行われていない点ですね。キャストがニューヨークでロケしたのは、恐らくニューヨーク公共図書館のシーンだけではないかと思います。もちろん、ニューヨークが舞台という設定ですし、ニューヨークのランドマークもいくつか写っていますが、それはセカンドユニットの仕事でしょう。キャストはそこにはいないはず。
エンドロールで確認すると、ロケ地はトロント、コペンハーゲン、ニューヨークの順に表示されていました。トロントは、ニューヨークの代替ロケ地として昔から活用されています。コペンハーゲンは、この映画の監督であるロネ・シェルフィグのフランチャイズですね。ニューヨークで大規模なロケを行わないのであれば、映画はローバジェットで仕上げることができます。
それぞれが他人同士の状態から始まる物語は、徐々にロシア料理店に集約されていきます。アルトマンやPTAの映画のように、大地震が起きたり、空から大量のカエルが降ってきたりはしませんが、実に自然な流れで、皆が一堂に会する瞬間を迎えます。「ニューヨーク 親切なロシア料理店」にしても「The Kindness of Strangers」にしても、実に上手くできたタイトルだと思います。
映画館で見逃した皆さんは、是非シネマ映画.comでご覧ください。この映画は、5月1日までご覧いただけます。