「腐乱死体の匂いを感じられる映画」屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ カールⅢ世さんの映画レビュー(感想・評価)
腐乱死体の匂いを感じられる映画
1970年から1975年のハンブルグで起きた連続殺人死体損壊遺棄事件の実話を題材に忠実に映像化した真面目な映画だった。全編ドイツ語。あからさまなおふざけシーンはない。急速に復興を遂げるドイツにあって、戦争の痛手から抜け出せない人達の群像劇でもある。題名の Der Goldene Handschuh は実在の場末の大衆酒場の店名。店の常連客の男たちはそれぞれ特徴的なあだ名があり、その過去や嗜好をさりげなく説明するシーンがある。なかでも印象的だったのは、背がとびきり高く、左だけ遮光レンズのメガネをかけた男で、親衛隊の生き残り。爆発で聴力もやられており、左耳に補聴器をぶら下げている。飲み屋のトイレで、「将校にトイレで軽口で話しかけるとは・・・」と青年に因縁をつけて、青年に背後から小便をかける。いたって冷静にやってしまう。彼の中では戦争はまだ終わっていないようで、戦後の日本映画を思い浮かべてしまった。
フリッツが自宅に誘ったあげくに殺してしまう女は皆かなりの高齢者で、身寄りがなく、行き場を失って途方に暮れたものたちや戦争中は強制収容所で売春させられたと語る高齢の売春婦。この店にはガールスカウトみたいな制服を着た女も現れる。困っている人を救済する目的があるようだが、常連の女からは口汚く拒絶される一方で、この女に助けられ、フリッツに殺されなくてすんだ老婆も描かれる。
犯人はロンパリ(斜視)で顔面が非対称で歯並びが悪い。特殊メイク。もちろん異常者だが、計画性はまるでなく、酔っては突発的に暴力に訴える。気が小さい。女性の扱いが雑で、突っ込むことしか頭にない。が、飲み過ぎで、勃たないか、ふにゃふにゃの場面が多い。相当頭悪いです。何かしらの先天的なハンディキャップがありそうな感じ。4階建てのアパートの屋根裏部屋に住んでいる。トイレは外の廊下。バスタブもないみたいだった。
しかし、レコードプレイヤーはもっていて、死体をノコギリで挽く場面や女を連れ込んだ時に自分でかけます。この映画の音楽は当時の流行歌がレコードプレイヤーやレトロなラジオから流れます。
酔って交通事故に遭い、それを期に酒をキッパリ断つ。仕事もビルの夜警に変わる。そこで、同じく夜間清掃の三十代と思われる女性と知り合う。その女性はフリッツをあからさまに嫌う様子がない。笑顔のチャーミングな明るい雰囲気の女性で、恋の予感も期待させるような場面だった。実はその女性には無職のアル中の旦那がいて、家のローンのために働く現実に息苦しさを感じていたからなのだった。ある日、コニャックの瓶をもってフリッツの警備室を訪れた彼女の身の上話を聞いて、酒を勧められたのをきっかけにまた酒浸りに戻ってしまう。
下の階で暮らすギリシャ人家族の天井からウジ虫が降ってくるシーンは確かにホラー映画でした。このギリシャ人家族の部屋から火事がでて、消火後の現場から死体が発見されて、御用になるシーンは彼の妄想シーンでしばしば出てくる留年女子学生を追いかけるシーンに連続するもので、脚本も撮影も良くできています。夜警の仕事で、拳銃を持たされるけど、拳銃は最後まで使わなかったです。期待させておきながら。
うじ虫が天井から降ってくる家に遊びに行ったことはあります。
「ネズミが死んでるんだよ」と友人はこともなげに言って、食卓の上をティッシュで片付けました。
映画未鑑賞ですが、
こういう映画のあとのオススメメニューといったら何でしょうか?(笑)
あまり怖い映画はダメダメのきりんより。