「心の傷は簡単に癒えず」グレース・オブ・ゴッド 告発の時 KZKさんの映画レビュー(感想・評価)
心の傷は簡単に癒えず
2時間半くらいあったのかな。実話ベースという事もあり、また被害者一人にスポットライトを当てるのではなく複数の被害者にスポットライトを当て負った傷、深い苦しみを丁寧に描いておりあっという間に時間が過ぎとても見応えのある作品に感じた。
宗教団体が国の一つの省庁となりそこの汚職と戦うのはやはり並大抵の事ではない。いろんなしがらみから加害者を守ろうと働き、それがかえって被害者達をさらに苦しみ未来を不安にし暗くする。
今作で描かれていた被害者達も何度も挫折をした。しかし被害者同士が交流し、互いに意見を交換し合い時間を共にする事で戦う姿勢、火を消す事なく戦い続ける事ができたのではないか。
このあたりの戦う描写は非常に心に響くものはあった。
この事件は加害者の神父を罰することはできたものの、組織自体を罰することは現時点ではできていない事がエンドロールで伝えられた。
ただ彼らが動いた事で、これ以上の加害者を生む事への防止、そして時効の引き延ばす事は成功した。これはこれから生きる若い者達の未来へ大きく貢献したわけだ。
では加害者達の心の傷は癒える事ができたのか。残念ながらこの作品だけではそれは分からない。少なからず動く前、そして動く事なく真実を闇に葬る事に比べたらいくらか傷は癒えたのかもしれないが、完全に癒えることはないように思える。
加害者の神父はその時の出来心のような発言をしていたが、加害者にとっては一時の行動にすぎなくても傷つけられたものは、そしてその家族は生涯におってその傷と付き合っていかなくてはならなくなる。
また人の心の傷とはなかなか理解しにくいものである。
家族ですらそれが分からず、我慢を強いたり、この作品内でもあったように「何で今更告発を?」なんていった言葉が出たりしてしまう。
それはもちろん仕方のない事かも知れない。人の心の傷なんてものは十分に理解できる方が数少ない事であろう。だから大切なのは人を傷つけない、そして時には傷つけないように守ってあげる事が大切になってくるのであろう。
そういう気持ちが時として周囲に傷ついたものが現れた時、少しは理解する事に繋がるのではないかと思う。
昨今で言えばネット上の誹謗中傷なんかも同じ事が言えるのではないか。
この作品を見て改めて人を傷つけない事、そして相手を思いやる事へのを大切さを感じ、そしてそれ以上に自分が傷つかない事の大切さも感じさせてもらった。
人の心は思ってるいるよりも脆いものである。人を優しくし傷つけない事は当たり前だが、自分のことも大切にしないと簡単に心は壊れ人生を奪われてしまう。
人の心の大切さを改めて考えさせてくれる、そんな作品だった。