「母と息子の熱演」ベン・イズ・バック Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
母と息子の熱演
総合:80点 ( ストーリー:80点|キャスト:90点|演出:75点|ビジュアル:70点|音楽:60点 )
あまり予備知識もないままに鑑賞した。だが母親の強さと演技の良さに加えて、単純そうで実は次々に明かされる隠された事実が展開する物語には、家族愛・麻薬の怖さ・麻薬に関わる人々の悲惨さと怖さ・医療ミスと、数々の主題が含まれていて質の高い作品だった。
最初はどういう状況かあまりわからないまま、ベンという若者がいきなりやってくる。彼に対する反応が家族により大きく異なる中で、母親のベンに対する愛情と事態を何とか上手くまとめようとする姿勢が目を引く。しかし母親はただベンを擁護するのはではない。彼女はベンを疑いほんのちょっとした隙すら見逃さないように監視もして、何かあれば激しく問い詰める。ただ信用することは出来ないのだなあという現実を見せられる。
そしてベンと家族のことだけかと思いきや、支援者の存在と正体・ベンがやってきた知られていない過去の事・社会に浸透している麻薬の怖さが、時にクリスマスの飾りや犬といった伏線と共に現れていく。これが事実であると思わせておいて実はそれが全くの嘘であるといった展開には油断していて騙されたし、麻薬は人を嘘つきにするということを見せつけられた。1日の出来事としては色々と詰め込みすぎな印象はあるものの、その脚本の巧みさには感心した。
そしてやはり息子と母親の2人の存在感と演技力は良かった。特に母親の賢さ・強さ・優しさと苦悩とを演じたジュリア・ロバーツは、『エリン・ブロコビッチ』にならぶはまり役だった。彼女は間違いもするし決して完璧な母親ではないが、ベンには絶対に必要な存在だった。息子のやることなすこと全てに反応して物語を作っていた。