「その手を離すことができない母の愛」ベン・イズ・バック とえさんの映画レビュー(感想・評価)
その手を離すことができない母の愛
薬物依存症の息子と、彼を救いたい母の物語
多くの家族にとって、一年で一番幸せなクリスマスの日。
その日に息子のベンは依存症のリハビリ施設から帰ってくる。
母はそんなベンが薬を絶ったと信じているが、再婚相手である夫と、ベンの妹は、ベンのことを信用できないでいる。
その家族の中の温度差がとてもやるせない。
母は、予定外にリハビリ施設から帰ってきた息子を満面の笑みで迎え、嬉しそうに、楽しそうに、息子のつまらないジョークを聞いている
しかし、再婚相手のニールと妹のアイヴィーはベンのことが信用できず、冷ややかな視線で見ている
彼らは、帰ってきたベンを見て、散々家をかき回したジャンキーの頃のベンを思い出すからだ
もちろん、それは母にとっても辛い思い出に違いない
それでも「クリアだ」という息子の言葉を信じ、つい笑顔になってしまうのが「母の愛」なのだ
そして、そんな家族がいる、生まれ育った地元は、ベンにとって誘惑に溢れている
かつての「ヤク仲間」が、裏切り者のベンが帰ってくるのを、手ぐすね引いて待っているからだ
きっと、映画を観ている多くの人が途中で「警察呼んだら良いのに」とか「強制的に施設に送り返した方が良い」と思うに違いない
そんなことは、母だってわかっているのだ
それでも、息子のことを信じたいし、手放せないのが「母の愛」なのだ
けれど、時にはその「愛」が息子にとっては重すぎて
プレッシャーになってしまう
自分はどうしようもないダメ人間なのに、母は最高の息子だと思っている
そして、ついつい母の愛に甘えてしまう…
その2人の愛がとても切なかった
最後まで観て、彼らにとってどうすることが正解だったのかと考えた
それは、クリスマスとか、誕生日とか一切関係なく、完全にリハビリが終わるまで、接触を断つことなんじゃないかと思った
優しい言葉をかけた瞬間に、お互いに甘えが出てしまうからだ
「ビューティフル・ボーイ」では、その引き具合に家族が悩まされる話だったが、この2本の映画を観て、本人が本当に絶望の淵に立ち、そこから自力ではい上がることが大事なことだと思った
依存症との戦いは、本人だけでなく、家族の戦いでもある
愛すべき家族が苦しむことになるから、精神を破壊する薬物の依存症になってはいけないのだ