「クリストファー・ドイルが再現する古き良き日本の情景」ある船頭の話 AuVisさんの映画レビュー(感想・評価)
クリストファー・ドイルが再現する古き良き日本の情景
確かに現代の日本で撮影されたはずなのに、近代化で失われて追想の中にしか存在しない美しい山間の景色が再創造されたかのように錯覚する。水墨画のような淡いカラー調整と、端正な構図によるところも大きい。撮影監督クリストファー・ドイルは、オダギリジョー主演作「宵闇真珠」に共同監督も兼ねて参加した縁で、オダギリの長編初メガホンとなる本作を撮ることになったとか。外国人の眼と感性によって再現された「和の美」に、日本人の監督・撮影監督たちも大いに刺激を受けるのではないか。
国際的に活躍するオダギリが長年温めてきた企画で、失われゆく日本的価値観、時代に取り残される庶民といったテーマが描かれるのも意外に思えた。だが、世界を知れば知るほど、それまで身近過ぎて見えなかったものを客観的にとらえられるようになることはありうる。その意味でもオダギリ監督と外国人の撮監の組み合わせは本作にうってつけだったようだ。
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