「映画は役者さんの芝居あってこそ。」ロマンスドール bloodtrailさんの映画レビュー(感想・評価)
映画は役者さんの芝居あってこそ。
そんな事を思い出させてくれる映画。この手の作品が淘汰されたら「日本の映画」は終わっちゃうと言う危機感もある訳で。最近。特に。文芸・芸術・感動・奇跡、そんな「映画は高尚なもん」スケールで語れば、この映画の下世話さが大好きだし、もう、役者さんが皆んな皆んな皆んな大好き。P瀧さん含めて。
哲雄は金次亡き後、エラストマーの処方と調質で苦心してますが、アレ、楽しくて好きでやってます。技術職って、自分がやりたいことをやってる限り、作りたいものを作っている限り、苦労なんて感じないもんで。眠いけどね。要するに身体的には辛いけど、心は折れないから。で、できたオッパイを社長が揉んでOK出しますが、あの時の満足感は、すごく良く分る。まぁ、成果を否定されたり、横取りされると腹立ちますし、やけ酒飲むのも分ります。
人として御立派でも無く、人格者でも無く、聖人でも無く、志も信念も、有るよで無いよな。中学生を煽ってからかう様なんて、アカン大人そのものだし。さらっと浮気しちゃうダラシナサとかあかへんやん。でもでも、そんな哲雄に男どもは共感を覚えるんちゃうかなぁ。
画の方は、バストアップなんてもんじゃ無いです。顔面どアップの連続。画面一杯に蒼井優です、高橋一生です。カメラは頭頂切れるくらいに迫ります。役者としては誤魔化し効きません。丸裸です。ウソっぽさはすぐばれます。もう、カメラの前での真剣勝負感マンマン。主役二人の演技の質は、この前見たマリッジ・ストーリーの2人に負けてないと思う。蒼井優、やっぱり良いわぁ。
つなぎ目の無い完璧なドールも、パーティングラインは残る。ハサミで丹念にバリを切り取り、丁寧にサンダーを掛けて。完成したドールは試さなきゃならない。横たわる「そのこ」を抱く哲雄は、しばし園子との再会を愉しみますが、命の無いドールは、所詮ドールでしか無く。園子を作ることなどできない、と知った時の絶望感と寂しさ。あそこが高橋一生さんの見せ場だった!
蒼井優は「スケベさ」を垣間見せる場面。この人、なんなの?自然でサラッとした場面で見せる魅力的な表情だけじゃ無く。オンナを魅せる演技も、演技に見えないんですけど!
園子と行きたかった「海」に一人で出かけた哲雄。砂浜のダッチワイフを手荒に掴み、歩き出し、俺だけが知っている園子、なんて独り言ち。園子だけが知っている哲雄もあるでよぉ。それが夫婦、っていうか、良い仲になった男女、って言うか。ぐふふ、っていうか、えへへ、な感じの締め方も、良かったです。タナダユキ監督のこのタッチ、実生活との距離感って、好きやわぁ。ワインバーで飲む、名前も値段も知らないワインも良いけど。家にも置いてある焼酎を、「おいおい、ちょっと高いんちゃうか?」なんて言いながら、飲み屋で飲んでる方が落ち着くんっすよ、俺。
良かった。とっても!
ーーーーーーーーーー
追記
◾️園子とそのこ
園子は哲雄の職業を分かっており、どれだけ打ち込んでいたかを知っていて「わたしを作って」と懇願する。商品化は前提の上で、それでも自分のコピーを哲雄に残したかった。哲雄にとって最初の一体だけが園子で、あとは「そのこ」。園子をドールとしてこの世に残すには会社の設備を借りるしか無いから売り物にするのは致し方無し。でも園子の名は使って欲しくない。
加えて、造形師として、園子をドールにしたいと言う欲求もあったので、砂浜のダッチワイフにブスなんて言ったんだと思います。俺が作った「そのこ」は美人だぞと。
愛する園子をドールとして商品にした哲雄の心理。この件が、綺麗ごとの純愛じゃない事を象徴してて良かったです。
bloodtrailさん
「本質の生々しさを匂わせない演出」
そうですね
監督が女性だからというのもあるのでしょうか。
女性視点での表現がとても上手いなと思いました。
bloodtrailさん
コメントありがとうございます。
確かに
画面に映る二人のアップが多いとか
表情も声も伝わってくるとか
園子さんの股間をスケッチするシーンとか
色々エロい場面もあります (…汗)
ただ、それが
二人の世界を空中からフカンしているような感じだったり
顔をおおった指の間から二人をみているような感じだったり
生暖かく見守っている自分がおりました。
なので「エロ」より「ラブ」に軍配を上げたい
そう思ったのでした。
↑もうなにいってるのかわからない スイマセン
どもども、早速の返信です。
「しょうもない映画を・・・」という件にドキリとしてしまい、あらためて最近の自分の評価を見直してしまいました!
と、よく考えたら、俺は評論家じゃねーや・・・と気づいて、自嘲してしまいました!(笑)
bloodさん、毎度どうもです!
あの、専門用語が飛び交ってるんですけど、フィギュアも趣味の一つですか~?
バリとかならわかるんですけど、あれを全部落とすとなると100万超えも納得です。ちなみにネット検索すると60万くらいの製品が多いようですね・・・
で、やっぱり邦画はこの路線の映画が主流にならないとだめですよね。派手なもんばかり作ってたらそのうち・・・