「ロマンスより大事なもの」ロマンスドール Masuzohさんの映画レビュー(感想・評価)
ロマンスより大事なもの
予告で何度か観て
面白そうだなーと思って鑑賞
ただ正直予告の時点でストーリーは読めてたんで
シンゴジラで巨災対チームのイメージを
市川実日子と引っ張りきった高橋一生と新婚さんの蒼井優
この人のおかげで公開遅れたピエール瀧
観るに不足ないキャスト陣に目が行きました
観た感想は
いやこれは面白かったです
ここまで男心を見透かした描写を女性監督に
されるとはおそれいりました
ただ紹介されただけのラブドール製作会社に行き
二つ返事で働くことを引き受けるちょっと変わった青年北村哲雄(高橋一生)
真剣に打ち込んでいるのかどうなのかわからないフワフワした感じを
リアルさを追及せよと社長の久保田(ピエール瀧)に言われ本当のおっぱいの
形や感触を確認するべく美術モデルの小沢園子(蒼井優)に
医療用の乳房の製作とうそぶき先輩職人の相川(きたろう)と共に採寸を依頼
なぜか引き受けた園子に哲雄は呆れるほどストレートに
告白して二人は結ばれゴールイン
しいていえば最大のロマンスはここかもしれません
(ちなみにラブドールって障害者の性欲処理用に
医師からの相談で考案された側面もあるので医療用というのも
近からず遠からじと言えます)
その採寸から生まれたラブドールは大ヒットしますが
本当の仕事を妻に明かせないまま哲雄は家にも帰れぬ多忙で
仕事でもトラブルが起こったり相川が亡くなったり
すれ違いから園子との距離も徐々に離れていきますが…
そもそも出会いからしてストレートだった夫婦
隠し事なんかできるはずはなく哲雄は自分の仕事を白状お互い浮気も白状
そして園子も病魔を打ち明け事態は急転
園子は哲雄を思って離婚を切り出します
なんとなく進んできた哲雄の人生に運命の選択がやってきます
でも哲雄は園子と歩む人生を選び
これまで以上に生きている事を実感すべく激しくまぐあいます
その中で園子は自分をドールにしてくれるよう哲雄に頼みます
哲雄は持てる技術を全て用い盗まれたエストラマー技術に勝る
シリコン製ドール製作に魂を注ぎます
入れ替わるように園子の命は失われていきます
それでも最後の最後まで園子と激しく愛を確かめあい…
そして…完成した「そのこ」は120万円ながら100体を即完売する
伝説のラブドールになります
面白いのは哲雄が完成した「そのこ」を実際に抱きますが
その瞬間園子になる演出など、終盤の怒濤のベッドシーンの応酬
観ていてなんでこうも何度も?と思ってしまいましたが
ラストの「皆が園子をデキた嫁だと褒めてくれたが俺しか知らない
事がひとつだけある…誰よりスケベだった」と述懐します
これが痛快でした
これでラブロマンスが吹っ飛んでしまいましたからね
自分の心血を注いで作った嫁ドールが100体も量産され知らぬ男に
抱かれるのを我慢できるのかとか思ってしまいますが
哲雄だけしか味わえないものを知っているワケですから
なんてこたないのでしょう
あんまりそういう細かいことを気にするタイプでも元々無さそうな
感じを高橋一生も絶妙に演じてますし全体が哲雄視点で描かれて
いますから園子のキャラもそう掘り下げる必要はなく
町工場でおっぱいの型取りをさせてくれる変わった人程度でいいのです
また相川のリアルなドールを追及したいというロマンスも
哲雄が同時にリアルの方が良い、と否定しているのが面白いところです
それでいてシリコンで最高のラブドールは作ってしまいましたから
ドールと本物はやはり近づけはするものの別物なのでしょうが
入魂の一作であることは作中の手間のかかる製作風景からも
十分感じ取ることが出来ます
蒼井優も迫真のベッドシーンの応酬は度肝を抜かれましたし
役者魂を大いに感じました
ピエール瀧は元警官でラブドール会社社長
やりすぎてしょっちゅう摘発されるがすぐ帰ってくる
と言うもはや自虐ネタにしかなっていない設定に
ニケニヤせざるを得ませんでした
リアルでもう捕まらないでね
奇妙な設定ながら奥行きや描写の意味合いが
非常に考えられ
キャストも監督の意図を汲んだ噛み合った演技で
非常に完成度は高いです
案外公開劇場少ないですがおすすめしたいです